研究課題/領域番号 |
20K05429
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
神谷 宗明 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (20509260)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 時間依存密度汎関数法 / 超分極率 / 並列プログラム |
研究実績の概要 |
時間依存密度汎関数理論(TDDFT)は、その妥当なコストと比較的高い精度のために励起状態を計算するための一般的な方法論になりつつある。この方法では繰り返しアルゴリズムを使えば基底状態の計算と同等のスケーリングで励起状態等の計算ができるが、分子サイズの増大に従って、これらの配列のメモリ使用量は基底関数の数の二乗で飛躍的に増加する。そのため、数万原子にも及ぶ大規模な分子系の励起状態を計算するためには、これらの配列のメモリ分割化が必要不可欠である。 そこで、本年度は、大規模分子の応答特性を計算するためのメモリ分散型並列 TDDFT プログラムを開発した。分子・原子の電場応答量である分極率や超分極率はn次の密度行列を求めることによって求めることができる。これらのn次の電子密度はn次のKohn-Sham方程式とn次の直交関係から求めることができる。本年度はこれらのプログラムを分散並列版のNTChemに実装を行った。 実装では、n次密度行列、n次Kohn-Sham行列をMO基底で表現し、NTPolyライブラリーを用いることにより、各計算機ノードに分割して分散される。直交関係やKohn-Sham方程式中のすべての行列乗算は、疎な対称行列の関数を計算するための超並列ライブラリであるNTPolyライブラリを用いて実行される。また線形方程式を解く反復法にはKAIN法を適用し、すべての施行ベクトルも分散化され、並列化されている。密度汎関数法による項の計算には基底状態と同じ分散並列化された数値積分を用い、交換相関汎関数の3次4次微分は昨年度開発した汎関数微分自動実装プログラムにより実装を行った。分散並列化を行ったことにより、従来n=20程度までしか計算されていなかった2次超分極率の計算を比較的少数のノードの並列計算でn=200まで計算することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、近年さまざまな応用が期待され急速な進歩がもたらされている光機能性材料に対して、素子内の励起状態間遷移、項間交差を適切に記述、再現できる理論を目指し、電子状態理論からの方法論開発を行っている。昨年に引き続き研究を継続したが、今年度は特に計画にあるTDDFT 法におけるメモリ分散並列化に取り組むことができた。 マレーシア・コタキナバルで行われた、International Congress On Pure And Applied Chemistry (ICPAC) Kota Kinabalu 2022と、ベトナム・クイニョンで行われたThe Tenth Conference of the Asia-Pacific Association of Theoretical and Computational Chemists (APCTCC-10 or APATCC 2023)にて招待講演にて発表することができた。今後これらを論文として発表していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降も引き続き、励起状態間の遷移の詳細な解析に向けた電子状態理論の開発、 相対論的非断熱分子動力学プログラムの開発を行っていく予定である。 特にまず、大規模系に向けた相対論的時間依存密度汎関数法の開発、プログラムの改良を継続的に行いつつ、スピン軌道相互作用結合状態におけるエネルギー勾 配と非断熱結合を計算するプログラムの開発をおこなう予定である。 2年間で購入したコンピュータをこれらの並列プログラムの開発に用いる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度新型コロナウイルス感染症とウクライナ情勢により、海外出張における費用の予測が難しく、ゆとりをもって執行を行ったため端数が生じてしまった。次年度は国際学会も通常に開催されるため、合算して旅費等で使用する予定である。
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