研究課題/領域番号 |
20K05436
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
吉川 武司 東邦大学, 薬学部, 准教授 (10754799)
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研究分担者 |
西村 好史 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (10778103)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 密度汎関数強束縛法 / 光活性イエロータンパク質 / cis-trans異性化 / プロトン移動 |
研究実績の概要 |
代表的な光受容タンパク質であるPYPの光異性化過程に着目し、その光励起により誘起されるプロトン移動ダイナミクスの全容解明を目指す。そのために、スーパーコンピュータ「京」で卓越した成果を挙げている分割統治密度汎関数強束縛分子動力学(DC-DFTB-MD)法を励起状態へと拡張し、大規模励起状態ダイナミクス法の基盤を確立しその応用計算を行う。昨年度までに、理論研究では、DC-DFTB-MD法を励起状態へと拡張するため、新たに分割統治時間依存密度汎関数強束縛分子動力学(DC-TDDFTB-MD)法の開発・実装を行った。 励起状態の検証のため、光活性イエロータンパク質の光異性化は無輻射失活過程であるため、円錐交差(CI)構造を高速かつ精度よく再現できる手法が必要となった。DC-DFTB-MDプログラムに対してコストと精度のバランスのよいスピン反転(SF)法を導入した。SF法をDFTB法に導入することにより、非常に高速にCI構造を再現することができた。また、CI構造の電子状態を解析するために凍結起動近似を用いたエネルギー成分の分解(クーロン項・交換項等)を行い、CI構造へと推移するための支配因子の解明も行った。その支配因子を用いることにより、より容易にCI構造探索が可能となった。 光活性イエロータンパク質の活性中心はp-クマル酸の反応サイクルにおけるプロトン移動に関する検証を行った。また、変異体におけるプロトン移動に関しても検討を行い、活性中心の周辺残基による効果がプロトン移動の障壁に対して寄与を持つことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和三年度は、基底状態計算の応用計算と励起状態計算の基礎解析を予定していたので、おおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
改良したDC-TDDFTB-MD計算を実行し、光吸収によるpCAの異性化反応とそれに伴う水素結合ネットワークの再配置を詳細に追跡することができ、実験的には観測困難な水素原子の動的振る舞いを含めた光異性化過程の全容を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内・国外旅費に換算していたが、まだコロナ禍ということもあり、出張予定が延期・中止となった。次年度は、応用計算がメインとなるため、多くの計算資源が必要となる。そのため、次年度使用額の多くは分子科学研究所等のスーパーコンピュータセンターの利用料金に使用する予定である。ハイパフォーマンスコンピュータを大量に利用することにより研究の促進を図る。
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