研究課題/領域番号 |
20K05437
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
天野 健一 名城大学, 農学部, 准教授 (30634191)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 画像統計処理 / 逆解析理論 / 装置開発 |
研究実績の概要 |
2020年度は光ピンセットの組み立てとその簡易利用を行った。また、ライン拘束型の光ピンセットに改良するための準備として、ガルバノミラ―型ライン光ピンセットとシリンドリカルレンズを用いたライン光ピンセットの装置研究を行った。 装置の組み立てと開発に並行して、装置で得られる画像の処理技術の研究も行った。コロイド粒子―コロイド粒子間の相互作用を求めるには、元データとして、接近しあったコロイド粒子の中心点間距離を高精度に求める必要がある。そのため、2020年度は既存の手法(複数個)とオリジナル手法の両方の検討を行った。画像処理にはフォートランよりもPythonの方が便利と判断し、Pythonの勉強も行った。 上記に書いたコロイド粒子の中心点間距離が正確に求まった場合、次に画像の統計処理を行いコロイド粒子―コロイド粒子間の相互作用を求める事になる。2020年度、この画像統計処理技術をより詳しく研究する事で、経験的フィッティングを用いる既存の方法では、正確に相互作用がデータから抽出しにくいという事が分かった。そこで、私は専門の統計力学を応用し、オリジナルの画像統計処理技術を構築し、それのプログラムも作成した。これまで、経験的フィッティングを用いる理由として非線形光学効果が原因と他者の論文に書かれていたが、今回新しく画像統計処理技術を構築した事で、非線形光学効果と思われていた現象のメカニズムも解明できた。また、この画像統計処理技術に関する論文の原稿も書いた。 本研究と並行して、コロイド粒子のサイズに関する非加算性と吸着の関連性も理論研究していたが、これの論文を名城大学農学部学術報告に出版する事もできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標はライン光ピンセットの開発とそれを用いたコロイド粒子―コロイド粒子間の相互作用の測定、そして、相互作用からコロイド粒子表面近傍の界面構造(高分子の密度分布構造)を求める事である。また、界面構造を求めるために逆解析理論の開発も必要である。これの達成のためには、まず第一に光ピンセットを組み立てる必要があるが、2020年度の内に光ピンセットを組み立てる事ができた。また、この装置のライン拘束型への改良の準備も出来た。 ライン光ピンセットによってコロイド粒子ーコロイド粒子間の相互作用を求める事は、既に国内外の研究グループによって達成報告がされている。しかし、私はこの研究に取り組む中で、ライン光ピンセット用の画像統計処理技術には一部の未解決問題が内在されており、これを解かない限りは正確には相互作用が求まらない事が分かった。そこで、2020年度はその問題を解決すべく新しい画像統計処理技術の開発を行った。そして、この理論の導出とさらにプログラミングを行い、検証利用する事もできた。これにより経験的フィッティングを用いずに相互作用が求められるようになった。 他、接近しあったコロイド粒子間の中心点間距離を高精度に求める画像処理技術のプログラミングも必要であるが、これはまだ未完成のため、ここでは進捗状況の区分を(1)ではなく(2)としておいた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はライン拘束型の光ピンセットを組み立てる。また、装置の位置改善と装置周りの環境整備(暗室にするなど)も行う。ライン光ピンセット完成後は、比較的単純な試料を用いて測定テストを行い、それが上手くいけば、いくつかの複雑な試料を用いた測定を行う予定である。 また、接近しあったコロイド粒子の中心点間距離をより正確に求めるために、オリジナルで画像処理プログラムを作成し完成させる予定である。中心点間距離という測定データからコロイド粒子―コロイド粒子間の相互作用を求める画像統計処理技術に関しては既に論文原稿の作成もできたので、これの論文化も2021年度中にする事が目標である。ちなみに、この画像統計処理技術を用いるとバルク中ではなく「基板近傍に拘束された」2つのコロイド粒子間の相互作用も求める事ができる。これはコロイド粒子―コロイド粒子―基板の3体相互作用の研究にも相当するので、可能であればこういった事にも挑戦する。 上手く研究が進めば、高分子が修飾されたコロイド粒子―コロイド粒子間の相互作用を求め、それと高分子物理の理論を用いて、コロイド粒子の表面近傍に修飾された高分子の厚みを概算する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の予算(直接経費)は全て光ピンセット組み立てのためのキット一式を購入するのに利用した。この予算が2,500,000円であったのに対し、キット一式が2,499,970円だったので、その残額として30円が残った。これは翌年度、消耗品または備品を購入する際に利用する予定である。
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