研究課題/領域番号 |
20K05439
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
小泉 健一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, NIMS特別研究員 (90573056)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 溶液系 / 第一原理分子動力学法 |
研究実績の概要 |
溶液系の第一原理分子動力学法の研究として、カリウム二次電池の水系濃厚電解液の解析を行った。東京大学の山田グループによって新たに報告された61.7mのカリウム濃厚電解液をターゲットにした。溶媒環境として水の配置が異なる六つのモデルを構築し第一原理分子動力学計算を行った。カリウムから水とアニオンの酸素に対する動径分布関数を書き、六つ全てのケースで一致することを明らかにした。トータルエネルギーを見ると一つだけ低いものが存在し、これは全てのケースが同じ状態にはないことを示唆していた。さらに、動径分布関数は一致するが拡散係数などの動的パラメータは各ケースで大きく異なってくることを明らかにした。拡散係数とカリウムイオンの濃度から求めたconductivityは実験値とオーダーが合う範囲で一致した。水とカリウムイオンの空間的な分布を可視化すると、拡散係数の小さいケースでは、水とカリウムの重なりが小さくなっていた。一方、拡散係数の大きいケースでは明らかな水とカリウムの重なりが確認された。このことからカリウムイオン周辺の水の配置はカリウムイオンの拡散に大きな影響を与え、水のクラスター周辺のカリウムイオンは拡散しやすくなっていることを明らかにした。このメカニズムはBorodin等の提唱していたメカニズムと一致し、水系濃厚電解液一般のメカニズムであることが示唆された。水系濃厚電解液内のカチオンの拡散には、カチオン周辺の水の配位環境が重要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
溶液系の取り扱いができたものの励起状態まで踏み込めていない。
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今後の研究の推進方策 |
励起状態の取り扱いをターゲットに研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で大幅に出張費が減少した。状況は良くなってきているので積極的に学会参加を行う。
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