研究課題/領域番号 |
20K05441
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
木場 隆之 北見工業大学, 工学部, 准教授 (40567236)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 局在表面プラズモン / OLED / 発光増幅 / 金属ナノ構造 / ナノスフィアリソグラフィ |
研究実績の概要 |
有機EL素子や量子ドット発光ダイオードは、ディスプレイ用途や照明等としての需要の拡大が見込まれ、さらなる効率化の要請がある。本研究では、金属ナノ構造に発生する局在表面プラズモン(LSP)を利用した発光増幅現象に着目し、これに基づいた高効率発光デバイスの開発が目的である。 令和2年度に得られた研究実績は以下の通りである。 1.Ag薄膜の熱処理によるナノ粒子化とその形態制御によるLSP共鳴波長制御 ― 以前、ガラス基板上のAg薄膜の熱処理によりAgナノ粒子が作製可能である旨我々も報告をしているが、その粒子径や粒子間隔の制御性をより詳細に検討するため、初期膜厚や熱処理温度による変化を系統的に調査した。簡便な真空蒸着法と熱処理の組み合わせにより、可視域全般にわたってLSP共鳴波長が制御可能である事がわかった。 2.ナノスフィアリソグラフィ法によるAl, Agナノプリズムアレイ、ナノメッシュの作製評価 ― 以前より、ポリスチレンビーズ配列をテンプレートとした金属ナノ構造の作製を行ってきたが、デバイス応用を考えると導電性を担保し電極として使用可能なメッシュ構造(ナノホール配列)が相応しいと考えた。そこで配列させたビーズの径を反応性イオンエッチングにより縮小して金属を蒸着し、金属ナノメッシュ構造を作製・評価した。作製したAl, AgナノメッシュはITO電極よりも低いシート抵抗を示し、LSPに由来する波長選択的な透過現象が確認され、光デバイスの電極としての応用可能性を示した。 3.金属/誘電体/金属(MDM)構造を電極として用いたOLEDの試作・評価 ― MDM構造はそれぞれの界面で生じるプラズモン同士の結合により、波長選択的な光透過を示す。金属Agと誘電体ZnSの組み合わせでMDM積層構造を作製し、OLEDの陽極として用いることで、発光波長の選択ができる電極として応用可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶液プロセスによる発光デバイス作製の安定性に課題はあるものの、金属ナノ構造の作製・評価や発光材料との組み合わせによる発光増幅現象の観測・機構解明に関しては順調に進展している。また、当初計画には無かった金属/誘電体の多層薄膜を用いたデバイスに関しては、研究をすすめる中で新たに得られた知見を基に新たに取り組み始めたもので、多層膜中に生じる表面プラズモンを活用したデバイスの効率化という点では元々の計画と共通しており、本課題として組み入れることとした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、有機系の発光材料のみならず、InP/ZnS量子ドット等と金属ナノ構造の組み合わせでの発光増幅現象の観測・機構解明に本格的に取り組む。また、発光デバイス中への金属ナノ構造の実装をより具体的に検討する。すでに試作・評価が進んでいる金属ナノメッシュ構造を中心に、これらの上に各種薄膜を成膜した場合の被覆性や凹凸の存在によるショートの防止法など、デバイス化する上での諸問題について洗い出す。またこれらの評価や発光増幅能の検討に関しても、デバイス作製プロセスの安定が必須となるため、現在、より信頼性の高いデバイス作製が可能な真空蒸着法によるOLEDを中心に研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により国内外での学会開催がオンラインとなり、旅費の支出が無かった分次年度へ繰り越す。繰り越し分は次年度の状況次第ではあるが、物品費での使用も含めて検討する。
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