令和4年度は、前年度までの実績を受け、デバイスの品質に安定性の高い有機蛍光材料を用いたOLEDを対象とした発光増幅性能の評価に注力した。 令和4年度に得られた研究実績は以下の通りである。 1.ナノスフィアリソグラフィ法と斜め蒸着を組み合わせた、各種金属ナノトライアングルダイマーの作製と熱処理による形態変化―PStビーズテンプレートを用い、金属蒸着時に基板を傾斜させ斜め蒸着を複数回することにより、近接した金属ナノ構造を作製しその光学特性や、発光材料との組み合わせによる発光増幅能の評価を行った。通常のナノ配列と比較し、斜め蒸着で作製したダイマー構造では消光スペクトルに変化が現れ、近接したナノ構造間でのギャッププラズモンの寄与も示唆されたが発光増強への寄与は小さく、むしろ熱処理による三角プリズム状から半球状への変化の方が発光増強へ大きく寄与した。(投稿論文準備中) 2. 簡便なプロセスによる金属/誘電体/金属(MDM)ナノキャビティ構造の作製―ナノサイズの共振器内に光を局所的に閉じ込めることで、既存のナノ構造や金属薄膜に生じるプラズモン効果を超える、強結合領域での相互作用の活用を目的とする。極薄Al保護膜の導入により下層の金属・誘電体層は平坦な薄膜構造を維持し、上層の金属層のみを熱処理によりナノ粒子化させる工程により、Ag/WO3/Ag系においてナノキャビティ構造の作製に成功した。 3. 金属/誘電体/金属(MDM)構造を電極として用いたOLEDの試作・評価 ― 本年度も継続して金属Agと誘電体ZnSの組み合わせでMDM積層構造を青色・緑色OLEDの陽極として用い、上層のAg層の膜厚変化により、マイクロキャビティモードとMDM中表面プラズモン間の結合強度が制御でき、ピーク分裂の大小が顕著に変化する事をFDTDシミュレーションとの組み合わせにより明らかにした。(投稿論文準備中)
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