本研究は界面が関与する自己駆動系で重要となる不均一な界面張力と表面の流れの時間依存性・空間依存性について,界面張力変化源直近から評価可能な測定手法を開発することで,未だ不確定性要素が多い自己駆動系の駆動機構検証を可能とし,自己駆動系設計に対して実験的フィードバックをもたらすことを目的としている。 本研究では当初、界面張力分布と流れの関係についての知見を得る方法として,界面変形の影響を受けにくい界面張力勾配を形成することで界面張力や流れの位置分布評価を行っていた。このため光反応で界面活性が変化する分子(アゾベンゼンジカルボン酸)の吸着状態変化や,温度勾配による界面張力勾配に対して準弾性レーザー散乱(QELS)法を適用して,メニスカスを軽減しつつ界面張力分布を計測することを試みたが,界面張力変化と流れは観察されても得られた変化が小さく流れも弱かったり,界面張力が本来の値と乖離する場合があった。 そこで本年度は測定系の工夫により界面変形の影響を軽減するのではなく,界面変形の影響を受けても信頼できる測定値を得ることができる測定系の考案・構築を行った。従来の方法では,メニスカスの界面変形を伴う物体直近では測定が困難になっていたが,本年度新たに考案した手法を用いることで,数度程度のメニスカス変形であれば,界面張力や界面流速が問題なく得られることが確認された。そこで今回,これまで測定できなかった純水表面を自走する樟脳船の前後の界面張力・界面流速分布について,従来の結果の30倍の時間分解能の測定を行い,樟脳船の速度と界面張力・表面流れの関係を明らかにした。 今回開発した手法は本研究で目的とした界面張力をその変化源直近から評価するための手法としても汎用性が高く,不均一な界面張力と表面の流れの時間依存性・空間依存性の研究の応用範囲を今後さらに広げることが可能になると期待している。
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