研究課題
比較的電子受容性の弱い大環状化合物などをデカメチルクロモセン等の強力な還元剤により陰イオン化し、種々の塩を単結晶試料として得た。以下にいくつかの結果を記す。テトラピリジルポルフィリン(Por)の陰イオンラジカルとテルビウム(Tb3+)の錯塩を反応させ、Por環が中性に戻った形で組み込まれた塩が得られた。TbはPor側鎖のピリジン窒素に配位し、PorとTbが2次元的な層状構造を形成していた。高スピンTb間に弱い反強磁性相互作用が見られた。フタロシアニン(Pc)に4個の15-クラウン-5 (15C5)ユニットを組込んだ(15C5)4Pcを中心として、Pc-Tb-(15C5)4Pc-Tb-Pcの2階建て構造を持つ錯体を得た。結晶溶媒が含まれた単結晶試料と溶媒を含まない粉末試料が得られた。何れも単分子磁石としての挙動が見られたが、スピン反転障壁の大きさは後者の方が大きかった。また、SnCl2を中心に持ち分子周囲を塩素置換したPcを還元しPc部分が-4価となった塩も得られた。6個のシアノ基を持つヘキサアザトリフェニレン(HAT)を用いて鉄(Fe2+)を含む塩を作製した。HAT3価ラジカル陰イオンのo-ビピリジル構造部分すべてにFeCl2が配位し、HAT : Fe = 1 : 3の組成を持つ陰イオンが生成した。HATと鉄のスピンが反強磁性的に相互作用し、3個の鉄上のスピンが総て平行な配置となる相互作用が見られた。低温ではS = 11/2の状態となった。その他、C60陰イオンラジカル塩やフォトクロミック分子の開環状態に遷移金属を配位させた錯塩なども作製した。また、本研究開始以前に得られていたエチレンジオキシ置換TTFの誘導体の塩、(EDO-TTF-I)2ClO4が冷却に伴って示す半導体-金属-絶縁体転移について、特に最低温度領域での電子状態の検討を行った。
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