研究課題/領域番号 |
20K05451
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
青木 健一 東京理科大学, 理学部第二部化学科, 准教授 (40385943)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | デンドリマー / クリック反応 / マイケル付加 / ウレタン形成反応 / 分子カプセル / 分子包接 |
研究実績の概要 |
初年度(2020年度)に、マイケル付加とウレタン形成反応という2種類のクリック反応を用い、骨格母体であるポリアクリレートデンドリマー(32末端型、AC32)を大量合成可能であることを見出した。(ダブルクリック法)また、AC32の末端にカルボキシル基を導入することにより得られたCA32は、アルカリ性水溶液に高濃度で可溶であること、および疎水性有機色素をゲストとして内部空隙に取り込み、分子カプセルとして利用可能であることを見出している。2022年度は、(1)ダブルクリック法の高精度化、および(2)Ac32の末端に一級アミンを導入し、酸性水溶液に可溶な32末端デンドリマー(AM32)を合成し特性評価を行うこと、という2項目について検討を行った。
(1)ダブルクリック法によるAc32骨格合成の高精度化 ダブルクリック法によるデンドリマー合成については、初年度に基本的な手法が確立しているが、世代拡張に伴い少量の不純物が生成することが分かった。不純物が生じる主な要因として、①ビルディングブロックであるチオール誘導体が二量化(ジスルフィド化)すること、および②イソシアネート誘導体が微量の水により分解することという2つを特定できた。①については、合成系に還元剤(トリフェニルホスフィン)を共存させることにより、チオールへの還元とその後のマイケル付加をワンポットで行うことができ、簡便性を損なわず、世代拡張の精度を上げることができた。②については、分液操作によりイソシアネート分解物を系外除去することにより解決できた。
(2)Ac32の末端にアミノ基を導入することにより、アミン塩酸塩を末端に有するデンドリマー(AM32)を合成できた。AM32は、純水に10wt%以上の濃度で溶解し、CA32と同様に疎水性ゲスト分子を内部空隙に包接可能であることが分かった。現在、詳細な特性評価を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、コロナ感染症による影響が大幅に減少し、ほぼ予定通り研究を遂行することができた。そのため、研究成果も順調に出始めている。ただし、成果発表においては、2020~2021年度のコロナ自粛による研究活動制限の影響がやや出始めている。特に、学会発表、学術論文への投稿による成果報告の数は予定していたものより少ない。以上より、判定区分として(1)ではなく「(2)おおむね順調である」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、骨格母体である32末端ポリアクリレートデンドリマー(Ac32)の大量合成法の合成精度がさらに向上するとともに、末端修飾により、水系媒体に高濃度で溶解するデンドリマー(CA32およびAM32)を合成することができた。今年度は、以下の2点に重点を置き研究を推進する。 (1)得られた水溶性デンドリマーの分子カプセルとしての機能性(疎水性ゲスト分子の分子包接能)を詳細に評価するとともに、包接メカニズムの推定を行う。 (2)ゲスト包接したデンドリマーを塗膜処理して硬化させることにより、ゲスト分子を固体膜内に均一分散させて固定化する手法を確立する。具体的には、デンドリマー末端の一部をオレフィンで置き換え、光化学的に生じるラジカル種を用いてデンドリマーどうしを光重合させることを想定している。 以上の2項目に加え、やや遅れている成果報告(学会発表、学術論文の投稿)にも力を入れていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
おおよそ16万円の繰り越し金が生じた。新型コロナの影響により、当初予定していたほど学会出張ができなかったことが主な要因である。また、学術論文投稿等の成果報告がやや遅れていることも要因として挙げられる。
|