研究課題/領域番号 |
20K05454
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
宮下 敦巳 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員 (00354944)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 陽電子 / グラフェン / 計算科学 / 表面 / ポジトロニウム分光 |
研究実績の概要 |
鉄系のホイスラー合金であるCo2FeGa0.5Ge0.5(CFGG)結晶について第一原理バンド計算を行った。 計算にはABINITコードを用いたPAW法を使用し、各原子の価電子には3s2 3p6 3d8 4s1(Co)、3s2 3p6 3d7 4s1(Fe)、3d10 4s2 4p1(Ga)、3d10 4s2 4p2(Ge)、2s2 2p2(C)を仮定した。モデルとしては、水平方向にはCFGGの2単位繰り返しを基本とした(3×1)構造とし、Fe、Ga、Geで終端した表面に8×2構造のグラフェンを整合させるモデルを用いた。裏面も同じ構造でグラフェンを整合させ、構造での偽効果を排除している。CFGGとグラフェンの間の結合にはファンデルワールス力を考慮している。表面間の相互作用を防ぐため20Åの真空層を設けたスラブモデルを用いてすべての電子・陽電子計算を行った。 モデル全体で構造緩和計算を行ったところ、CFGGの表面とグラフェンとの層間が2.9Åとなった。この層間距離は共有結合では無く、ファンデルワールス力にて結合している距離である。グラフェン層の炭素原子の面に垂直方向での乱れは0.1Å程度でありグラフェンとしての性質を良く保持していると期待できた。そこでグラフェン層の炭素原子のみを抽出して電子の状態密度を導出した所、グラフェン層はその特徴であるディラックコーンをほぼ残しており、スピントロニクス材料としての性質が失われていない事が示唆された。 電子・陽電子の相互作用を評価するために、両者の実空間上での分布を導出し、その積によってポジトロニウム(Ps)生成を評価した。通常の固体では表面から真空に張り出してくる電子と陽電子が作用するのが支配的であるが、本モデルではそれに加えCFGG層とグラフェン層との間でも電子・陽電子の相互作用が認められ、固体内で再結合している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄系のホイスラー合金であるCFGG結晶について、(3×1)繰り返しの中規模モデルを用いた電子・陽電子の相互作用における解析を深化させている。
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今後の研究の推進方策 |
鉄系のホイスラー合金であるCFGG結晶については、基本構造の(3×3)繰り返しの大規模モデルへと拡張して解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の支出可能額では使用予定の物品等の購入には不足したため、次年度予算と合わせて利用する事とした。
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