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2022 年度 実施状況報告書

デンドリマー三量体のフォールディングによる精密ナノ構造の創出と機能発現

研究課題

研究課題/領域番号 20K05466
研究機関大阪公立大学

研究代表者

小嵜 正敏  大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10295678)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードデンドリマー / ポルフィリン / フォールディング / 配位結合 / 吸収スペクトル / 蛍光スペクトル
研究実績の概要

先に亜鉛ポルフィリン核を有する共役鎖内包型デンドリマーの両末端に別のタイプの亜鉛ポルフィリン核を有する共役鎖内包型デンドリマーをクリック化学の手法を応用して連結することで直鎖三量体の合成を達成した。同様の手法を応用することで異なるタイプの亜鉛ポルフィリン核を有する二種のデンドリマーから構成される直鎖二量体を構築した。サイズ排除クロマトグラフィーによって繰り返し生成物を分離精製することで直鎖二量体を単離することに成功した。核磁気共鳴スペクトルおよび質量分析によって二量体の構造を同定し、高純度で得られていることを確認した。
亜鉛ポルフィリン核と配位結合を形成できる二座配位子であるビピリジン(bpy)およびジアザビシクロオクタン(DABCO)を外部刺激分子として用いて直鎖二量体を環状高次構造に導くことを検討した。紫外可視吸収スペクトル滴定によって直鎖二量体と二座配位子との錯体形成挙動を追跡した。配位子としてbpyを用いた場合は、期待した1:1錯体の形成は確認できず複雑な錯体形成挙動が観測された。一方、bpyと比較して配位力が強いDABCOを外部刺激分子として用いた場合は、直鎖二量体の亜鉛ポルフィリン部とDABCOの錯体形成を示唆するスペクトル変化を観測できた。理論式を用いて吸収スペクトル滴定の結果を再現することに成功し、安定な1:1錯体の形成を確認した。また、蛍光スペクトルを用いて、二量体と配位子との錯体形成反応を追跡した。その結果、bpyを用いた場合も1:1錯体が形成されていることを明らかにした。しかし、二量体とbpyの1:1錯体は相対的な安定性が低いため、溶液中における支配的な化学種ではないことがわかった。一方、二量体とDABCOの1:1錯体は高い相対的な安定性をもっていた。以上の結果より、外部刺激分子を用いて直鎖二量体を安定な環状高次構造に誘導する手法を確立した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的の一つは独自に開発したナノ構造創出法をさらに発展させて、複雑なナノ構造を構築することである。2021年度末までの研究期間に溶液中で金属イオンを添加することによって共役差内包型デンドリマー三量体をキラルな高次構造に誘導することに成功している。2022年度は、共役差内包型デンドリマー二量体を環状高次構造に誘導することに取り組んだ。二量体を構成するデンドリマーの核である亜鉛ポルフィリンどうしを架橋する配位子を外部化学刺激として溶液に加えることで、多量体のフォールディングを誘発することに成功した。その結果、デンドリマー直鎖二量体を環状高次構造に誘導することに成功している。この研究成果によって独自に開発し改良を進めている外部刺激を利用する特長的なナノ構造構築法の汎用性を著しく高めることができた。
また、高次構造変化を追跡する手法として吸収スペクトル滴定に加えて蛍光スペクトル滴定を併用することでより詳細な反応解析が可能になることを明らかにした。本研究の成果により確立した反応追跡法は、今後の多様な高次構造構築法の開発に対しても応用できる重要な基盤技術である。今後、鎖長がさらに長い共役差内包型デンドリマー多量体を環状構造に導くための基盤となる手法と評価法を確立できた。また、本研究で創出した環状高次構造では分子末端どうしが接近しているため、分子末端どうしを共有結合で結合して環化させるときに有利な配座である。従って、有機分子を用いて分子末端どうしを共有結合で架橋して環状集積体を構築する手法として有望な、テンプレート合成法を実施するために必要な基礎的知見を研究成果として得ることができた。

今後の研究の推進方策

クリック化学の手法を応用してデンドリマー直鎖三量体を合成する手法を確立している。また、外部化学刺激として機能する架橋配位子の添加により二量体を環状高次構造に誘導する手法も確立した。これらの研究成果を応用して、デンドリマー直鎖三量体を環状構造に導くことを検討する。すでに、計算化学的手法を駆使して外部刺激として適切と予測される分子の設計と合成を達成している。この分子を用いて直鎖三量体を環状高次構造に導く反応条件を探索する。
また、直鎖二量体の両末端を共有結合によって架橋することで環状二量体を構築することに取り組む。最初に、計算化学の手法を用いて架橋分子の分子設計を実施する。これまでデンドリマー多量体の合成で有効性を実証しているクリック化学の手法を共有結合形成法として応用することにより高収率で環状集積体の合成を達成する。環状集積体の合成収率が低い場合は、テンプレート合成を検討する。これまでの研究成果によって、デンドリマー直鎖二量体はジアザビシクロオクタンと安定な1:1錯体を形成し環状高次構造をとることを明らかにしている。この環状高次構造においては分子の両末端どうしが接近しているため環化反応の効率向上が期待できる。そこで、ジアザビシクロオクタン存在下における環化反応を行い、反応条件を最適化することで収率の改善を目指す。
さらに、デンドリマー直鎖三量体の分子末端を共有結合によって架橋する課題にも取り組む。環状二量体の構築に関する研究の成果を応用して環状三量体を創出する。この場合も反応が進行しないまたは収率が悪い場合は、テンプレート合成に取り組む。先述したデンドリマー直鎖三量体を環状高次構造に誘導する研究の成果を応用して、安定な1:1錯体を形成することのできる分子をテンプレートとして利用する。

次年度使用額が生じた理由

分子合成に予定よりも長い期間を要したため、補助事業の目的をより精緻に達成するための追加実験の実施と論文投稿が2022年度に完了しなかった。そのため次年度使用額が生じた。次年度使用額の補助金を使用して追加実験と論文投稿を実施する。補助事業期間延長を申請して承認されている。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Platinum octaethylporphyrin-diphenylanthracene dyad with an ethynylene linker2022

    • 著者名/発表者名
      Wada Takumi、Tachi Yoshimitsu、Toyota Kazuo、Kozaki Masatoshi
    • 雑誌名

      Tetrahedron Letters

      巻: 108 ページ: 154131~154131

    • DOI

      10.1016/j.tetlet.2022.154131

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A fused polycyclic compound containing phenothiazine and diazapyrene skeletons with weak D?A interactions2022

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Keito、Tachi Yoshimitsu、Kozaki Masatoshi
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 58 ページ: 8572~8575

    • DOI

      10.1039/D2CC02635J

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 縮合多環骨格に窒素原子を有するペロピレン誘導体の合成と物性2023

    • 著者名/発表者名
      稲田秀真、舘祥光、小嵜正敏
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会
  • [学会発表] 共役鎖内包型ポルフィリンデンドリマー環状体の合成2022

    • 著者名/発表者名
      中尾拓巳、舘祥光、小嵜正敏
    • 学会等名
      第32回基礎有機化学討論会
  • [学会発表] ジアザピレン骨格とカルバゾール骨格を有する縮合多環化合物の合成と物性評価2022

    • 著者名/発表者名
      栗本清灯、舘祥光、小嵜正敏
    • 学会等名
      第32回基礎有機化学討論会
  • [備考] Laboratory of Physical Organic Chemistry Reseach

    • URL

      http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/chem/phyorg/POCweb/research.html

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公開日: 2023-12-25  

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