研究実績の概要 |
カルベン等価体である、シリル置換カルベノイド「(Ph2MeSi)2CLiBr」を活用して、一連の高周期典型元素ヘテロアレン類縁体>C=E=C<を合成・単離し、これらの特異なベント型累積二重結合に起因する特異な性質を明らかとすることを目的とする。アレン型分子(R2C=C=CR2)は、置換基や配位子により中心炭素の酸化状態が変化し、異なる性質を発現することから近年盛んに研究が行われている。ごく最近、申請者らが合成に成功した、高周期16族元素である硫黄やセレンを中心とするヘテロアレン型分子ビス(メチレン)スルファン及びセラン(>C=Ch=C< (Ch= S, Se))の特異な構造・性質に鑑み、一連の元素特性を反映した特異な物性発現を指向して、一連の高周期14, 15, 16族の高周期典型元素を中心とするアレン型分子の創製研究を行った。 2022年度において、前述したシリル置換カルベノイド(Ph2MeSi)2CLiBrを用い、単体テルルとの反応を行ったところ、テルルを中心とするヘテロアレン型分子ビス(メチレン)テランの合成・単離に成功した。各種分析により、ビス(メチレン)テランがアレン型分子特有の性質を示すことを明らかにした。この合成により高周期16族元素を中心とするヘテロアレン類であるビス(メチレン)カルコゲナンすべての合成を達成した。 この知見をもとに14族、15族元素を中心とするヘテロアレン型分子の創製を行い、高周期典型元素を中心とするアレン型分子の系統的な性質解明を行う予定である。
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