研究課題/領域番号 |
20K05469
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研究機関 | 公益財団法人国際科学振興財団 |
研究代表者 |
赤阪 健 公益財団法人国際科学振興財団, その他部局等, 主席研究員 (60089810)
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研究分担者 |
加固 昌寛 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (10233678)
前田 優 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10345324)
山田 道夫 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00583098)
鈴木 光明 城西大学, 理学部, 助教 (40741757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金属内包フラーレン / フラーレン / シリル化 / ゲルミル化 / S-ヘテロサイクリックカルベン |
研究実績の概要 |
次世代を切り拓く革新的な電子・光・磁気機能を有する物質の創出を図るため、分子エレクトロニクス素子や単一分子デバイスをはじめ、磁気的、光学的機能材料としてのナノカーボンが注目され、その基礎および応用研究が精力的に展開されている。本研究では、最も特異な構造と電子的特性を有するナノカーボンの一つである金属内包フラーレンに着目し、元素化学に基づく選択的分子変換による新しい構造や電子的特性を有する分子の創出を図った。これまで金属内包フラーレンの生成量が少なく分離精製が困難であったことから、限られた研究しか行われていなかったが、申請者らが開発した大量分離法がブレークスルーとなり、困難とされていた金属内包フラーレンの化学修飾に関する研究を行える環境が整ったので金属内包フラーレンの分子変換法の開拓の一環として、金属内包フラーレンの光電変換材料としての有用性を発現させるために溶解性の向上とその電子的特性の制御を目的とした。これらの化学は他に例のない全く独創的な研究であり、フラーレン化学の単なる一分野の開拓のみならず、金属内包フラーレンを新しいナノカーボン材料科学へと導くものであり、本研究がもたらす新しい領域への貢献及び波及効果は大きいと信じる。本研究では、金属内包フラーレンの電子的特性や反応性の解明を行うと共に元素化学に基づく分子変換による種々の誘導体合成を遂行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成・単離した金属内包フラーレンについて、これまで申請者が開発してきた選択的光ケイ素化反応やカルベン付加反応に加え、新たな光ゲルミル化反応やS-ヘテロサイクリックカルベンの付加反応等を用いた分子変換法の構築を試みた。M3N@C80(M=Sc, Lu)はC60,C70の空フラーレンに次いで大量に得られるフラーレンであり、例えば、Lu3N@C80の太陽電池への適用の可能性が示され多くの期待が寄せられているが、未だ溶解性等の技術的問題で実用化には至っていない。 M3N@C80の多様性を発現させることを目的として新たな分子変換法を開拓し、合わせて分子変換により溶解性を高めた誘導体の光電変換材料としての有用性を検討した。系内で発生させたゲルミレンとCS2の[2+3]型付加反応によるS-ヘテロサイクリックカルベン(SHC)とのC60の付加体を得ることに成功しているので各種ジシレンへの適用を検討した。また、すでに炭素ケージの電子状態とπ電子系曲面の歪みが重要な役割を果たしていることを明らかにしており、金属内包フラーレンの反応性の予測を行い、効率よく誘導体化することを試みた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においても引き続き金属内包フラーレンの電子的特性や反応性の解明を行うと共に元素化学に基づく分子変換による種々の誘導体合成を行う。合成・単離した金属内包フラーレンについて、新たな光シリル化、光ゲルミル化反応やS-ヘテロサイクリックカルベンの付加反応等を用いた分子変換法の構築を試みる。金属内包フラーレンとしてのM3N@C80の多様性発現のため新たな分子変換法を開拓する。さらに集積化による導電性の向上等の機能開拓を行う。合わせて、すでに明らかにしている炭素ケージの電子状態とπ電子系曲面の歪みの重要な関係性を用いて、各種金属内包フラーレンの反応性の予測を行い、効率よく誘導体化する方法論を開拓する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で学会・討論会や研究打ち合わせ会議が全てオンライン形式での開催となった。また研究の進捗にも支障をきたしました。来年度は今年度の状況を踏まえ、改善策を講じて研究を進めます。
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