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2020 年度 実施状況報告書

X線および固体NMRとの相補性強化による微小な分子性結晶の単結晶中性子構造解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K05470
研究機関国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

大原 高志  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主幹 (60391249)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード単結晶中性子回折 / 有機結晶 / J-PARC / 単結晶X線回折 / 固体NMR / 量子化学計算
研究実績の概要

単結晶中性子構造解析法は結晶中の水素原子を観察する極めて強力な手法であるが、巨大単結晶を必要とすることから測定のハードルは非常に高い。本申請課題では、X線回折および固体NMRで得られた構造情報を最大限活用することで、中性子回折データから決定する必要がある構造情報を極力減らし、これによって従来の1/10程度の体積である0.2~0.3ミリ角の単結晶試料を用いた単結晶中性子構造解析を実現することを目的としている。令和2年度はこれまで代表者によって単結晶中性子構造解析が行われ、構造既知である2-(2'-hydroxyphenyl)benzimidazole(HPBI)について中性子回折測定と同一温度条件での単結晶X線回折測定を行い、水素原子-非水素原子の結合距離や非水素原子も含めた各原子の温度因子について、X線と中性子との間で比較検討を行った。また、微小結晶からの中性子回折データを模したものとして、既存の中性子回折データを基にS/N比を悪化させた模擬の回折イメージデータを作成し、ここから回折強度データを作成することで回折イメージデータの処理における弱い反射の取り扱いについて最適化を進めている。これらに加えて、単結晶中性子回折データと固体NMRスペクトルを橋渡しする方法として、DFT計算の一種であるGauge Including Projector Augmented Waves(GIPAW)法に注目した。本手法は結晶構造から化学シフトを求めることができる手法であり、現在、中性子およびX線構造解析で得られた水素原子位置およびX線構造解析の結果から水素原子の位置をDFT計算によって最適化した構造を用いてGIPAW計算を行い、水素原子位置の違いが固体NMRスペクトルに対して及ぼす影響について調査を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和2年度は、首都圏の供用施設のNMR装置を利用して固体NMRを実際に測定することを計画していたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により国内の移動が難しかったことから、固体NMR測定については令和3年度以降に実施することとした。本研究では中性子、X線、NMRを相補的に利用して進めるものであるが、上記の理由によりNMRについてやや遅れている。

今後の研究の推進方策

令和3年度は、HPBIについて供用施設の固体NMR装置を用いたinvCP-VCスペクトルの測定を行う。また、GIPAW法によって得られた結晶構造と化学シフトの相関を基に、水素原子の構造パラメータの影響が大きいNMRスペクトルの測定も行う。これらにより、分子中の水素原子-非水素原子間の結合距離を求める。ここで得られた結合距離を基にした束縛条件を構造精密化に反映し、先に準備した様々なS/N比の中性子回折データを用いて構造精密化を行う。構造精密化の結果は束縛無しの精密化で得られた構造と比較し、中性子回折データのS/N比および束縛条件が水素原子の構造パラメータに及ぼす影響を系統的に調べるとともに、従来の1/10の測定時間に相当する回折データから信頼性の高い結果を得ることを目標に束縛条件の最適化を行う。

次年度使用額が生じた理由

令和2年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により予定していた国際学会(IUCr2020)が令和3年度に延期となったため、当該旅費を令和3年度に執行することとした。また、同様に新型コロナウイルス感染症拡大の影響で供用施設を用いた固体NMR測定を延期したことから、測定に必要な消耗品代や施設利用料、国内旅費の執行を令和3年度以降に執行することとした。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Determination of Crystallographic Planes for a Polyhedral Single Crystal2021

    • 著者名/発表者名
      Nakao Akiko、Moyoshi Taketo、Moriyama Kentaro、Matsumura Takeshi、Iba Kenshirou、Ohara Shigeo、Ishikawa Yoshihisa、Munakata Koji、Ohhara Takashi、Kiyanagi Ryoji
    • 雑誌名

      JPS Conf. Proc.

      巻: 33 ページ: 011067

    • DOI

      10.7566/JPSCP.33.011067

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Magnetically induced electric polarization in Ba3Fe2O5Cl2 with tunable direction in three dimensions2020

    • 著者名/発表者名
      Abe N.、Shiozawa S.、Matsuura K.、Sagayama H.、Nakao A.、Ohhara T.、Tokunaga Y.、Arima T.
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 101 ページ: 180407

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.101.180407

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] MLFの単結晶中性子回折計SENJUの最新状況2021

    • 著者名/発表者名
      大原 高志, 鬼柳 亮嗣, 中尾 朗子, 宗像 孝司, 石川 喜久, 森山 健太郎, 田村 格良, 金子 耕士
    • 学会等名
      2020年度量子ビームサイエンスフェスタ
  • [学会発表] 単結晶中性子回折計SENJUの最新状況2020

    • 著者名/発表者名
      大原 高志, 鬼柳 亮嗣, 中尾 朗子, 宗像 孝司, 石川 喜久, 森山 健太郎, 田村 格良, 金子 耕士
    • 学会等名
      日本中性子科学会2020年度年会

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公開日: 2021-12-27  

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