• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

多環芳香族化合物の立体配座の変化と光反応に基づく強発光性蛍光センサーの開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K05474
研究機関金沢大学

研究代表者

前多 肇  金沢大学, 物質化学系, 教授 (40295720)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードピレン / ピレノファン / ペリレン / アザクラウンエーテル / 蛍光 / 蛍光センサー / ソルバトフルオロクロミズム / 金属イオン認識能
研究実績の概要

ピレンの4,5位にアルコキシ基、1,8位に電子受容性置換基を導入した化合物を10種類合成し、溶液中で蛍光スペクトルを測定したところ、蛍光波長は溶媒の極性が大きくなるにつれて長波長化し、正のソルバトフルオロクロミズムを示した。各化合物の基底状態と励起状態の双極子モーメントの差と蛍光波長の移動量に良い相関が認められた。
ピレンの1,3位にジアザ-15-クラウン-5またはジアザ-18-クラウン-6を連結したピレノクリプタンドを合成し、蛍光特性と金属イオン認識能を調査した。各種金属イオンを添加して溶液中で蛍光スペクトルを測定したところ、15員環を持つものはLi+またはNa+を添加した際に、18員環を持つものはMg2+またはBa2+を添加した際に、それぞれモノマー発光の強度が著しく増大することが分かった。
ペリレンと、18-アザクラウン-6または15-アザクラウン-5エーテルをメチレンで連結した化合物の溶液に各種金属イオンを添加し、蛍光スペクトルを測定した。その結果、前者ではMg2+、Ba2+、後者ではそれに加えてNa+を添加した際に蛍光強度が著しく増大した。
これまでに合成例のない(4,5)ピレノファンの合成を検討した。ピレンからピレン-4,5-ジオールを調製したのち、KOH存在下、ジトシラートとの反応を行ったところ、ジオキサメチレン鎖で架橋されたピレノファン7種類が合成できることが分かった。溶液中で蛍光スペクトルを測定したところ、いずれの化合物もピレンのモノマー発光のみを示した。すなわち、今回合成した(4,5)ピレノファンの立体配座は、メチレン鎖の影響により、ピレン環同士が離れたアンチ型構造を持つと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究において、あまり光らないスチルベンの蛍光量子収率を増大させる分子設計に成功した。また、もともとよく光るピレンやペリレンにアザクラウンエーテルを取り付けることにより、高い蛍光強度を保ったまま金属イオンを選択的に認識する蛍光センサー分子を開発することにも成功した。さらに、ピレンの4,5位にアルコキシ基、1,8位に電子受容性置換基を導入した化合物は溶媒の極性に応答して蛍光の波長(色)が変化する蛍光センサー分子として有用であることを示すことができた。また、今回、(4,5)ピレノファンの合成に初めて成功した。(4,5)ピレノファンは有機化合物のカチオンやアニオンに応答する蛍光センサー分子として期待できるが、そのためには平衡をよりシン型構造へと片寄らせる必要がある。合成手法はほぼ確立することができたため、今後は結合鎖を見直して合成を進めてゆく予定である。

今後の研究の推進方策

今後も引き続き、蛍光量子収率を向上させる分子設計指針の模索を続けるとともに、発光の長波長化を図る。また、金属イオンのみならずアンモニウムイオン、アニオン、求核剤など他の多様な分子を認識する分子の開発をそれぞれ行う。さらに、可逆的な光反応や立体配座の変化の利用も検討する。これらの成果を踏まえ、学術的にも価値が高く、工業的にもこれまでにない優れた高機能性蛍光材料の提供へと結びつける。

次年度使用額が生じた理由

(理由)当初の予定よりも物品費を節約することができたため。
(使用計画)翌年度分として請求した助成金と合わせ、物品費、旅費、その他費として使用する計画である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 その他

すべて 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [学会発表] ピレンとジアザクラウンエーテルを連結した金属イオン認識型蛍光センサーの開発2022

    • 著者名/発表者名
      川井一輝,古山渓行,前多 肇
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] ペリレン-アザクラウンエーテル連結分子による金属イオン認識型蛍光センサーの開発2022

    • 著者名/発表者名
      三部伊吹,古山渓行,前多 肇
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] ピレンをコアとするデンドリマーの合成と蛍光特性2022

    • 著者名/発表者名
      島田晃一,高山奈菜,古山渓行,千木昌人,前多 肇
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] ルイス酸を用いるアリールメチルピレニルエーテルの芳香族転位反応2022

    • 著者名/発表者名
      忠谷悠史,古山渓行,千木昌人,前多 肇
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [備考] 金沢大学理工研究域物質化学系応用化学コース精密有機合成化学研究室ホームページ

    • URL

      http://kohka.ch.t.kanazawa-u.ac.jp/lab4/lab4.html

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi