研究実績の概要 |
本研究では、プロペラ型分子レセプターの自己会合を介したサブユニット型キラルアロステリック分子の開発を目的として研究を行っている。この目的のもと、2022年度には以下の4つの研究を進めてきた。 1) これまで開発してきた2枚羽根型アロステリックレセプターが、アミノ酸塩の分子認識においてゲストの構造によって温度依存的なCotton効果の反転の有無が異なることを見出し、2つのレセプターの出力を利用することでアミノ酸の炭化水素側鎖(Val, Leu, Phe, Pro)の識別に成功した。 2) 先に見出した3枚羽根型プロペラ分子に基づく自己会合二量型分子カプセルにおける分子認識能を詳細に調査したところ、内包されるゲストは下記の順に従うことを明らかにした。o-C6H4Br2>PhBr>m-C6H4Br2>1,3,5-C6H3Br3>>1,3,5-C6H3Br3~p-C6H4Br2。さらに中央コアをベンゼンからトリアジンに変更すると、ドナー性のMeO置換ベンゼン類にも会合能を示すことを見出した。 3)アロステリック会合と動的共有結合を利用した自己複製伸長型超分子ポリマーの形成を検討した。アルデヒド型レセプターに対し、会合部位が異なる2種の基質を混合したところ、より会合能が高いゲストが優先的にイミン形成し伸長する自己複製挙動が認められた。 4)昨年度見出したジベンゾピロロ[1,2-a][1,8]ナフチリジンに基づく二重螺旋型錯体が温度や金属イオン依存的な開閉挙動を示すことを見出すとともに、キラル側鎖を導入した二重螺旋型錯体において一方のヘリシティに偏らせることに成功した。さらに興味深いことにこの錯体は用いる溶媒によってP/Mのヘリシティが反転することを見出した。
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