研究課題/領域番号 |
20K05485
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝洋 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80367052)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 天然物全合成 / セスキテルペン / Diels-Alder反応 / ビシクロ[2.2.1]ヘプタン |
研究実績の概要 |
立体的に複雑な縮環構造(高次構造)を有する天然有機化合物(天然物)は、有用な生物活性を示すものが多く、医薬品・農薬として利用されてきた。それらの多くは有機化学的に合成されているが、依然として合成未達成のものも残されている。申請者の提案する「一段階多重環構築戦略」は、これらの合成困難な高次構造天然物に対する有効なアプローチであると考えている。そこで本研究では、近年シキミ属植物から単離が報告されたイリシモニンAを標的化合物とし、全合成を達成することで「一段階多重環構築戦略」の有用性を実証することにした。 昨年度に引き続き、イリシモニンAの骨格合成に向けてモデル化合物を用いた検討を行った。アロセドラン骨格からイリシモニンA骨格への骨格転位反応は、当初ベンジル酸転位による反応機構で進行すると推定していたが、詳細な反応条件の検討の結果、レトロクライゼン反応/アルドール反応の二段階の反応によって起きていることを明らかにした。これにより全合成達成には、ビシクロ[2.2.2]オクタン上の3つのケト基が必須であることが判明した。しかしながら、レトロクライゼン反応/アルドール反応によって生じるα-ヒドロキカルボン酸は望みでない立体化学の異性体が優先して得られているため、選択性の改善が今後の課題である。 現在イリシモニンAの全合成に向けて、すべての必要な官能基を備えた基質をもちいた合成に着手し、アロセドラン骨格の合成段階を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症の拡大による大学キャンパスの閉鎖などがあったが、全体としては計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はイリシモニンAの全合成達成に向け、研究を鋭意推進していく。Diels-Alder反応や骨格転位反応について、それぞれ立体選択性に懸念が残るが、反応条件の検討や異性化反応を駆使することで、天然物の効率的な合成を目指す。
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