研究実績の概要 |
本研究では、炭素の混成状態が変わることで過剰反応が抑制される現象を「生成物の形を変える反応設計」としてその基盤に据え、これを発展させて独自の有機フッ素化合物合成の体系を構築する。 本研究におけるアプローチは、(I)これまでの成果の拡張 と、(II)二次中間体調製への展開 の2つの段階に分けて設定している。 令和4年度は、医薬としてのポテンシャルを有する新規ジペプチドバイオイソスター合成法を開発した。具体的には、アリール基が置換した2-アセトキシ-1,1-ジフルオロシクロプロパンに対してアセトニトリル存在下トリフルオロメタンスルホン酸を作用させ、位置選択的な開環を経て (2,2-ジフルオロホモアリル)アミドを高収率で得た(アミノ基の導入)。ここでは、フッ素置換基の特徴の一つである対角位結合の伸長効果を活用している。こののちSN2'型のシアノ化と加水分解 (カルボキシ基の導入)で、目的の1,1-ジフルオロアルケン (ジペプチドバイオイソスター) を合成することに成功した。本反応は(トリフルオロメチル)アルケンや(トリフルオロメチル)シクロプロパンを起点とした一連の合成手法を1,1-ジフルオロシクロプロパンに拡張したものであるとともに、三成分カップリングによる、従来法よりも自由度が高いジペプチドバイオイソスター合成法を提供している。 なお、令和4年度は本反応について1件の学会発表を行なっており、英文誌への論文投稿も準備している。
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