研究実績の概要 |
本研究では、ホウ素置換基を有するトリエンへのヒドロシランの付加反応による「ホウ素置換基とケイ素置換基を同一炭素上に有するジエン化合物」である1-ボリル-1-シリル-2,4-ペンタジエン誘導体の合成法を確立し、そのホウ素置換基とケイ素置換基間の反応性の違いを利用して連続的かつ選択的な結合生成反応を実現することを目的に研究を行った。過年度までにブタジエニルホウ酸ピナコールエステル誘導体と種々のシラン類との反応ではシランとしては比較的酸性度の高いシランを用いると高収率で、対応する1-シリルアリルボラン誘導体が生成することを明らかとした。また、触媒としてはトリアルキルホスフィンを有するモノ(ホスフィン)パラジウム(0)錯体が高い活性を有することも明らかとなった。この知見をもとにトリエニルホウ酸ピナコールエステルのヒドロシリル化反応を行うことで、1-シリル-2,4-ペンタジエニルボラン誘導体の合成に成功した。また、1-シリルアリルボラン誘導体とアルデヒドとの熱的条件下でのアリルボリル化反応によるビニルシラン型化合物の生成に引き続く檜山カップリング反応による連続的結合生成反応を行った。令和4年度はボリル化共役トリエンのヒドロシリル化における位置選択性制御に成功した。すなわち、トリフェニルシランを用いたヒドロシリル化では、パラジウム錯体上ホスフィン配位子にトリブチルホスフィンを用いると収率76%で1,6付加体、トリフェニルホスフィンでは収率44%で1,4付加体が優先的に生成した。また、フェニル基のパラ位に電子供与性置換基を有するトリアリールシランとのヒドロシリル化においては、収率76%で1,6付加体が、電子求引性置換基を有するトリアリールシランでは、収率83%で1,4付加体が選択的に得られた。また、DFT計算によりこれらの反応における位置選択性の発現メカニズムを明らかにした。
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