研究実績の概要 |
以下にR4年度の研究成果について報告する。 (1)α,β-不飽和イミニウム塩の[2+2]光二量化反応 芳香環に種々の置換基を有するα,β-不飽和イミニウム塩を合成し、結晶作成後X線結晶解析を行ったところ、いずれの基質もHT型に配列していることを見出した。これは、分子間カチオンーπ相互作用により配列が制御されたことを示唆しており、様々な基質に対しても本手法の有効性を示すことができた。次に、イミニウム部の酸による加水分解によりケトンへの変換を検討した。その結果、塩酸などでは生成物ケトンのα炭素の異性化が起こったが、ピリジニウムパラトルエンスルフォネート(PPTS)を用いると、異性化することなく加水分解を行うことができた。[2+2]光二量化反応で得られた4員環生成物は、ポリマー合成の原料であるモノマーとして利用されており、また、合成のビルディングブロックとしての利用も期待される。そこで、このジケトンに対してDIBALによる還元を行ったところ、高い選択性でmeso-ジオールが生成することを1H NMR, X線結晶解析により明らかにした。 (2)アンモニウム塩存在下におけるイミダゾリジノン類のNorrish-Yang反応 R4年度は基質側鎖のベンゾイル基の芳香環置換基の選択性に及ぼす影響について検討した。その結果、置換基が電子求引基のCN基である場合、電子供与基の場合に比べジアステレオ選択性が逆転しcis体が良好な選択性で生成した。これは、ビラジカル中間体が環化する際、CN基とアンモニウムが引き合う遷移状態が優先することで選択性が逆転したものと考えられる。 以上、2つの光環化反応において、カチオンーπ相互作用を利用することで、従来法では合成できなかった立体化学を有する生成物を得る新たな手法を開拓することができた。当初考えていた不斉反応に関しては今後の更なる検討が必要である。
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