研究実績の概要 |
研究実施者らはこれまで,ごくありふれた二座配位子でありながら,いまだにその構造制御を目指した特異な性質を持つ配位子開発が盛んに研究されている, 1,2-ジイミン構造を用いた金属-金属間相互作用を有する二核構造の構築およびその光学特性について研究を進めてきた.通常平面構造を取るビピリジン錯体の 3,3’-位にフェニル基のような嵩高い置換基を導入することでビピリジンが非平面構造となることに着目し,この配位子を有する遷移金属錯体のπ系のねじれを 鍵とするキラルな性質に基づく光学特性を明らかにすることを目的として,様々な配位子を設計した.初年度は剛直なキラル二核構造をとりうるビス(イミノピリジン)配位子の合成と機能評価,次年度はより簡便なキラルソースを用いて同様の二核錯体の合成を試みた.最終年度はこれまでに合成した複核錯体が示す触媒活性についての検討を行った.ビス(イミノピリジン)配位子及びその白金錯体を用いてC-H結合活性化として最も代表的な反応である,C-Hホウ素化反応についての検討を行った.実際にアレーンのC-Hホウ素化に対応する生成物は確認されたが,現在のところ既存の触媒活性あるいは選択性を上回る結果は得られていない.いずれにしても,本複核錯体が示す機能はキラル光学活性だけにとどまらず,様々な性質を示しうることが判明した.本研究の成果をまとめ,現在学術論文として発表する体制を整えている.
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