研究課題/領域番号 |
20K05493
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
岩本 貴寛 中央大学, 理工学部, 助教 (50735355)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 不斉配位 / 遷移金属触媒 / 3d遷移金属 |
研究実績の概要 |
前年度までに、目的配位子のグラムスケールでの合成法確立とパラジウムを使ったモデル錯体合成に成功している。また、モデル錯体の検討において、錯形成時にリン上キラリティーから窒素上へのキラリティー転写が効率的に起こり、特定の窒素上置換基では立体選択的に錯体が得られることを見出した。 これらの検討結果から配位子設計概念の妥当性を実証できたことから、今年度は本研究の目的である3d遷移金属錯体の合成を検討した。中でも、金属として鉄の利用に焦点を当てた。多種多様な中性鉄前駆体との錯形成を検討したが、鉄錯体の合成には至らなかった。一般に、鉄とリンなどの補助配位子との配位はパラジウムなどと比べ弱く、系中での配位子解離が問題となることがあるが、本配位子系においても配位子と鉄との配位力が弱いために平衡が配位子解離に偏っていることが明らかとなった。種々の検討を行った結果、カチオン性鉄前駆体を利用することで鉄錯体の合成が可能であることが分かった。鉄錯体が常磁性であり、窒素上キラリティーを含む錯体構造の完全な決定には至っていないため、今後単結晶X線構造解析による錯体の同定を進めていく。 上述の通り、本配位子と鉄との配位力の弱さは触媒反応への応用の際に触媒失活などの問題となることが予想される。そこで、配位力の向上を目指し、キラルリン配位子に対して新たな配位部位の導入を行っている。本検討を通して、堅牢な鉄錯体の創製を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
完全な構造決定には至っていないが、望みの鉄錯体の合成に成功した。また、鉄錯体創製において配位子の解離という問題点が明らかとなったが、その対策として配位力を強めた配位子の合成もすでに始動している。
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今後の研究の推進方策 |
鉄錯体の構造決定を目指して、単結晶X線構造解析を進める。すでに検討に入っているが、結晶性の低さが先らかとなっており、結晶化に向けて配位子上置換基の検討を行う必要がある。鉄錯体が望みの立体構造を持っている際は、触媒反応開発に移るが、リン部位からのキラリティー転写が不十分な場合は窒素上置換基の検討を行う。なお、前年度までに多様な置換基を導入可能な配位子合成法を確立しているため、これらの検討に必要な配位子供給基盤は確立されている。 今年度明らかになった配位力の問題解決を目指し、配位力を増強した配位子の合成を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の実施内容についてはおおむね当初想定した計画通りに進捗したが、一部研究状況に変化が生じたため余剰金が発生した。
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