研究課題/領域番号 |
20K05499
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
東林 修平 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (30338264)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フェノール / アルケン / 酸化 / 炭素ー炭素結合形成 / 環化 |
研究実績の概要 |
フェノールのメタ位にアルケニル側鎖を有する骨格において、フェノールに種々の置換基を持つ基質、側鎖にヘテロ原子を有する基質、側鎖の炭素鎖長が異なる基質、二、三、四置換アルケンを有する基質を検討し、これらの基質において良好な収率で酸化的分子内フェノールーアルケンカップリングが進行し、目的物を与えることを明らかにした。開発した本反応の有用性を立証するため、リポキシゲナーゼ阻害活性を有する天然物テトラペタロンAの右半分の六員環-五員環フラグメントの骨格形成反応に本反応を利用する全合成に展開した。臭素をフェノールの置換基に、ヒドロキシ基を側鎖の置換基に有し、不斉炭素を有する基質において、望みの酸化的環化反応が位置選択的かつ立体選択的に進行し、目的物が良好な収率で得られた。左半分の五員環ラクタム構造を持つフラグメントの合成も進め、右フラグメントとの銅触媒を用いたカップリングを検討している段階である。 フェノールのメタ位にアルケニル側鎖を有する基質に加え、パラ位にアルケニル側鎖を有する骨格において、酸化的分子内フェノールーアルケンカップリングによるスピロ骨格の形成を検討した。目的の反応が進行し、スピロ骨格を有する化合物が得られると共に、さらにスピロ骨格が1,2-転位が進行した化合物が得られた。これらの反応が確立できれば、スピロ骨格を有する化合物のみならず、種々の二環性骨格の化合物の合成に有用であり、現在これらの反応の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、フェノール類とアルケン類の酸化的分子内カップリングの開発に成功し、種々の置換基を持つ基質、複素環の形成にも適用できることを明らかにした。また、本反応を生物活性天然物の骨格形成に応用し、その構築に成功した。計画になかったパラ位置換体においても同反応が進行し、さらに予期していなかった転位反応によって新たな骨格形成に利用できることが明らかになったことから、当初の計画以上の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、開発した酸化的フェノール-アルケンカップリングを骨格形成反応に応用したテトラペタロンAの全合成研究を進める。合成した右半分と左半分のフラグメントを連結し、テトラペタロンAの全合成を達成する予定である。 一方、パラ置換体の酸化的フェノール-アルケンカップリング反応の条件検討、最適化を進め、スピロ骨格合成法として確立する。また、続く1,2-転位反応とのタンデム反応についても検討、最適化を進め、二環性骨格形成反応として開発する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度においてCOVID-19の影響による学会発表、出張の中止のため、当初の計画の学会参加費の使用が無くなり、主に物品費(消耗品)に助成金を使用した。2020年度から2021年度の半ばまで、感染防止のため、所属機関による活動制限(登校人数制限、時間制限)があり、当初計画した実験数が減少し、試薬、物品の消耗が少なくなった。このため2021年度は新たに消耗品を購入する必要がなくなった。そこで当初の使用計画を変更し、2022年度に繰り越した。一方、2021年度は、学会がオンラインで開催されるようになったため、学会発表のための参加費に助成金を使用した。2022年度は、所属機関による活動制限もなく実験を計画通りに行える予定であり、現地開催される学会も増加すると予想されることから、助成金を主に物品費(消耗品)、学会発表費用に使用する計画である。
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