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2021 年度 実施状況報告書

非配位性アニオン・キラル四炭素置換ボレートによるカチオン種の不斉認識

研究課題

研究課題/領域番号 20K05508
研究機関新潟大学

研究代表者

田山 英治  新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90372474)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードキラルボレート / 第四級アンモニウム塩 / キラルアニオン / キラル識別 / 不斉認識 / 光学活性
研究実績の概要

研究代表者は、第四級アンモニウム塩の光学純度を決定する手法を2019年に発表し、この成果を基盤として2020年度から本研究課題を開始している。キラルビナフチル骨格を有する四炭素置換ボレート陰イオンを合成し、第四級アンモニウム塩に作用させることでジアステレオマー混合物塩を形成させる。そのプロトンNMR分析により第四級アンモニウム塩の光学純度が決定できる。2020年度に得られた結果に基づいた2021年度の実績を以下に示す。
(1)2020年度の研究成果の論文発表:2020年度の研究成果「キラルテトラアルキニルボレートによるN-キラル第四級アンモニウム塩の不斉認識」は、論文投稿に必要な実験データは95%揃っていたが、この段階で主要分析機器である700MHz NMR(学内共同利用機器)が故障したため全て揃わず、論文投稿と発表が遅れていた。当該機器は2021年度に修理されて使用可能となり、残ったデータ収集により論文発表に至った。
(2)キラルボレートの新しいリンカー部の発見:(1)で述べたように、2021年度の大半は主要分析機器である700MHz NMR(学内共同利用機器)が使用不可となり、キラルボレートの不斉認識能を評価する環境が不充分であった。汎用の400MHz NMRでも研究を進めることは不可能ではなかったが、非効率と判断した。そこで2021年度はキラルボレートの構造デザイン、特にホウ素原子と結合させるリンカー基の構造について主に検討を行った。これまでのリンカー基の例はPommereningらによるテトラフルオロフェニル基、研究代表者によるプロパルギルエーテル基の二種類のみであり、それぞれ長所と短所があった。リンカー基について各種検討したところ、テトラフルオロフェニルエーテル基が、リンカー基の導入の容易さと、ボレート形成に必要な反応性、の両者を兼ね備えていることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

(1)不斉認識能を評価する高分解能NMR装置の故障:キラルボレートの不斉認識能の評価には高分解能NMR装置を用いているが、研究代表者所属の組織が所有する700MHz NMR(学内共同利用機器)が故障し、修理予算確保のため長期間使用不可となっていた。その間、汎用の400MHz NMRは使用できたが、充分な判断ができない環境で各種キラルボレートを合成し、それらの不斉認識能を評価しても非効率と判断した。その研究内容については大きく進めることができなかった。
(2)キラルボレート形成のための新たなリンカー基発見まで:(1)で述べたように、2021年度の大半は700MHz NMR(学内共同利用機器)が使用不可となっていた。そこでキラルボレートの構造デザイン、特にホウ素原子と結合させるリンカー基について、優れたリンカー基を見出す検討を主に行った。最終的にテトラフルオロフェニルエーテル基を見出すに至ったが、それまでのリンカー基検討では継続使用に値しない結果のみとなり時間を費やした。

今後の研究の推進方策

2021年度の結果を活かし、以下の点について検討する。
(1)不斉識別能の向上を目的とした置換基導入:2021年度はリンカー基としてテトラフルオロフェニルエーテル基を用いると、簡便な手法で容易に導入でき、かつ立体障害によるボレート形成の低収率化を解消できることを見出した。この結果を活かし、キラルボレートの基盤となるビナフチル骨格に各種置換基を導入し、次いでテトラフルオロフェニルエーテル基をリンカーとして導入する。そのリチオ化と三塩化ホウ素との反応により各種キラルボレートを合成する。得られたキラルボレートと第四級アンモニウム塩のイオン交換を行い、生成したジアステレオマー混合物塩のプロトンNMR分析により不斉認識能を評価する。併せて結晶性についても確認し、再結晶によるジアステレオマー分割と、単結晶生成によるX線結晶構造解析の可能性を探る。
(2)キラルボレート・トリチルカチオンの合成と応用:トリチルカチオンがルイス酸として機能することを活かし、そのキラルボレート塩をキラル有機ルイス酸とする試みが報告されている。しかし選択性を得るには至っていない。(1)により様々なキラルボレートが合成できる利点を活かし、塩化トリチルとの反応により相当するキラルボレート・トリチルカチオンを調製する。これを光学活性有機ルイス酸とした向山アルドール反応やDiels-Alder反応を行い、生成物にエナンチオ選択性の発現が見られるか実験を行う。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Chiral tetraalkynylborate as a chiral solvating agent for N-chiral tetraalkylammonium salts2022

    • 著者名/発表者名
      Eiji Tayama and Ryotaro Nishio
    • 雑誌名

      Tetrahedron

      巻: 114 ページ: 132783

    • DOI

      10.1016/j.tet.2022.132783

    • 査読あり

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公開日: 2022-12-28  

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