研究実績の概要 |
本研究では,「キラルなホウ素触媒の開発および,触媒的不斉反応によるキラルなホウ素化合物の合成」を目指した。 光学活性ボリン酸の開発と触媒的不斉反応への展開を見当した。軸不斉化合物BINOLを原料とし,ビナフチル骨格3,3’位や6,6’位,またホウ素に直結するアリール基の構造修飾を行うことで,9種類のC2対称ビアリール骨格を有する光学活性ボリン酸を合成した。また,ホウ素部位を1つしかもたない非対称ビアリール骨格を有する光学活性ボリン酸についても4種類合成した。合成した計13種類の光学活性ボリン酸を用い,モデル反応としてPasserini型反応を選択し,触媒的不斉反応の検討を行った。わずか2 mol%と少ない触媒量ながらも,最高75%収率で目的のα-hydroxyamidoを得ることができた。しかし,いずれの触媒においても高いエナンチオ選択性が発現されなかった。 また,ピリジン環を有する多点認識型NHC配位子と銅塩によるイミンの不斉ホウ素化反応を行った。我々はこれまでにピリジン環有する多点認識型NHCを開発し,様々な不斉反応に展開してきた。しかし,多点認識型NHC前駆体となるピリジン環有するトリアゾリウム塩は触媒としての利用のみであった。そこで,ピリジン環有するトリアゾリウム塩の不斉配位子としての応用を目指し,実際に,イミンへの不斉ホウ素化反応における不斉配位子として用いることで,生成物のα-アミノホウ酸誘導体を最高60% eeで得ることに成功した。また,本反応においてピリジン環が生成物の立体選択性の向上に関与していることも示すことができた。
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