研究課題/領域番号 |
20K05510
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
吉見 泰治 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (30345673)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レドックス光有機触媒 / 光脱炭酸反応 / ミリチューブ / 太陽光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的を達成するため、3つのことを進めていく計画であった。3つのこととは、①新規で価値のある有機光反応の開発を行うこと、②太陽光で効率よく働くレドックス有機光触媒の開発(可視光だけでなく紫外光でも働く触媒)を行うこと、③太陽光の利用を可能にするミリチューブリアクターの構築とその特徴を明らかにすることである。 特に、本年度は②の新規レドックス有機光触媒の開発が大きく進展した。9,10-ジシアノアントラセン(DCA )のひとつのシアノ基をアルコキシカルボニル基に代えた新規触媒を合成し、その光触媒の吸収を測定したところ、少しブルーシフトしており,405 nm の青色 LED の光を効率よく吸収できることがわかった.次に,これらを用いた可視光によるカルボン酸の光脱炭酸反応を検討した.カルボン酸としてN-Boc バリンもしくは安息香酸を用いて DCA との青色 LED を使用したところ,光脱炭酸を経由してアルキルおよびアリールラジカルが生成し,アクリロニトリルに付加した生成物が得られたが,DCA の低い溶解性のため収率が低かった.溶解性の高いメチルエステルを用いた場合,非常に高い収率で付加体を得ることができた.それに対して,エチルもしくはイソプロピルエステルを用いた場合,触媒が光分解するために収率の低下が見られた.このような光分解は,触媒のラジカルアニオンを経由し、エステルが加水分解される。この加水分解は、アルキルラジカルの安定性に依存していることがわかり,1番不安定なメチルラジカルが生成してしまうメチルエステルの触媒では,この光分解反応が抑制された。つまり、メチルエステルがこの光脱炭酸反応における適切な光レドックス触媒であることを明らかにした。これらの結果を論文に投稿し、論文掲載がアクセプトされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、コロナによって実験の進展が大きく阻害されたが、21年度は大きな問題なく実験が行えたので、当初予定のところまで進むことができた。特に、新規レドックス有機光触媒の開発が大きく進展し、論文掲載がアクセプトされた。また、現在、この触媒を用いた新規光反応の開発を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
新規レドックス有機光触媒の開発が大きく進展しので、これを用いた①新規で価値のある有機光反応の開発を行うこと、③太陽光の利用を可能にするミリチューブリアクターの構築を進めていく。特に、新規レドックス有機光触媒を用いた①を積極的に進めており、アスパラギン酸やグルタミン酸の側鎖のカルボキシ基を可視光反応で変換することに成功した。より詳しい、反応条件や基質の検討を行っている。
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