太陽光発電システムは、光エネルギーを電気エネルギーに変換するシステムであるが、そのシステムの一つである有機薄膜太陽電池発電システムでは、有機物である電子供与体と電子受容体(C60フラーレンなど)間での電子移動(有機化学反応)により、電気エネルギーが作り出されている。本研究では、この有機薄膜太陽電池発電システムにおける電子移動システムを応用し、C60フラーレンおよびその誘導体を光電子輸送型触媒として利用する新しい有機化学反応システムの開発を目指した。特に、フラーレンの光照射下における酸化力は比較的強いが、対応するフラーレンラジカルアニオンの還元力は弱く、適用可能な反応が制限されてしまう問題点があったため、本問題を解決するために連続した2段階光励起によるフラーレン触媒の高機能化を計画した。検討の結果、現在のところ触媒化には至っていないが、独自にデザインした分子内にチオウレア部位を有したフラーレン誘導体が通常のフラーレンおよびフラーレン誘導体では還元ができない有機分子を2段階光励起により還元できることを見出した。また、これまでに開発した簡便に合成可能なフラーレン誘導体を可視光光触媒として用いる研究として、ラジカルアクセプターとして[(phenylethynyl)sulfonyl]benzeneをアルキルラジカルドナーとしてトリフェニルアルキルボレート塩を用いたラジカル反応においてフラーレン誘導体が可視光光触媒として有効に働くことを見出した。
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