ラクトマイシン類はStreptomyces sp. ACT232から単離された天然有機化合物である。ラクトマイシン類は強力なカテプシンB阻害活性を示し、新規な作用機序による抗がん剤のリード化合物として期待される。本研究では、構造活性相関研究を志向したラクトマイ シン類の合成法確立を目指して、研究を実施した。 2023年度も引き続き、C1からC13炭素骨格の構築を検討した。光学活性グリシドールを出発物質として3-ブチン-1-オール誘導体を反応させた後、末端ヒドロキシ基をジメ チルビニルシリルクロリドで保護した。このシリル基を利用した分子内ヒドロシリル化反応によって3置換オレフィンを立体選択的に構築した。生じたトリメチルシリル基はヨウ素へ変換した後、C3-C7骨格をもつボラ ン化合物を鈴木-宮浦カップリング反応により連結して、中程度の収率でC3-C13炭素骨格を構築した。その後、C2-C3位の二重結合を安藤法によるWittig反応で構築後、分子内ラクトン化反応を行って、C1-C13位の炭素骨格を構築した。最後に、AD-mix-βによるジオール化を検討したが、目的の化合物は得られなかった。そこで、ラクトンを構築する前にジオールを構築することとして、鈴木-宮浦カップリング反応後にAD-mix-βを利用した不斉ジヒドロキシ化反応を行ったところ、ジオールを構築することができた。その後、先と同様の方法でラクトンを構築し、C1-C13骨格の構築を目指す。
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