研究実績の概要 |
2020年度は、サンプル形状によるGrain-boundaryの寄与と、完全結晶プルシアンブル(PB)及びその類似体(PBA)の合成を主に進めた。 くし形電極を作製したガラス基板に、PBインクを塗布し、スピンコート法により薄膜を作製した。その薄膜のプロトン伝導度を評価した。自己組織化単分子膜を利用した場合は、加熱により緩和周波数が高くなり、プロトン伝導度も向上した。スピンコート法では、加熱前後共に高い緩和周波数を示し、Grain-boundary free機能を容易に発現した。粒子が三次元的に重なったスピンコート膜では、粒子間で接点が生じ、grain-boundary free機能の発現に寄与したと考えられる。伝導度の湿度依存性を調べたところ、単層膜よりも広い範囲で高い値を示し、膜厚によって水分子の保持能が上がり、プロトン伝導経路が保持されたと考えられる。また、ペレット膜では高緩和周波数を示したが、再現性が低く、有効な結果は得られなかった。 完全結晶PB及PBAの合成:ニトロプルシドナトリウム(Na2[Fe(CN)5NO])水溶液と2価金属イオン(Fe, Co, Cu, Ni)水溶液をモル比1:1で混合し、PBAの合成を行った(NO置換体のためPBA(NO)と記載)。得られた粉末の蛍光X線分析により、CuPBA(NO)およびCoPBA(NO)ではFeとの比率が1:1に近づいた。CuPBAで水和数が最も低く、完全結晶を示唆する結果となった。 フェロシアン酸カリウム水溶液とCu水溶液を混合し、CuPBAを合成した。この際、Fe/Cuを0.5-10と変化させた。低Fe比ではわずかに異方的なナノ粒子となった。高Fe比では、短辺が数10nm、長辺が200 nmを超えるナノシートへと変化した。また、CuPBAの組成は、低Fe比では欠陥構造体であったが、高Fe比では完全結晶体となった。
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