(最終年度まとめ)[Eu(pda)2]-錯体と、キラルな[Co(en)3]3+を水溶液中で共存させたところ、Co錯体のΔ、Λ体により符号が異なる強いCPLスぺクトルがEu3+の5D0→7F1遷移に帰属される発光帯に観測された。また、Co錯体の濃度を増やすと、発光スペクトルの形状が変化すると同時に、発光強度が減少することが観測された。時間分解発光を測定したところ、数μ秒の時定数で減衰する早い成分とミリ秒の時定数で減衰する遅い成分が観測された。遅いほうの時定数は、Co錯体の濃度の増大に伴い短くなるので、動的消光過程により消光するとした。速い方の成分はCo錯体の濃度により変化せず、静的消光過程とした。Euの発光とCo錯体の吸収に重なる部分があるので、エネルギー移動による消光過程が存在すると考えられる。 μ秒時間領域にて、CPLの時間変化を測定した結果、短い成分の発光だけがCPL信号を示した。このことは、キラルな[Co(en)3]3+と静的に会合した[Eu(pda)2]-錯体が強い円偏光を示す。[Eu(pda)2]-錯体は、通常アキラルな構造を持つが、キラルな[Co(en)3]3+と会合したときにキラルな構造に変形することで、円偏光発光とスペクトルの変化が誘起されるという結論が得られた。 (期間全体のまとめ)円偏光フェムト秒パルスにより励起された銅(I)ジメチルフェナントロリン錯体のフェムト秒時間分解円偏光発光を計測したが、右円偏光発光と左円偏光の有意な差は観測されなかった。 [Eu(pda)2]+錯体に、キラルなCo錯体を共存させると、[Co(en)3]3+が共存したときに強い変偏光が観測された。マイクロ秒時間分解円偏光発光計測から、[Eu(pda)2]-錯体と[Co(en)3]3+が会合することで円偏光発光を示すことが分かった。
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