研究課題/領域番号 |
20K05531
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
石田 斉 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (30203003)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 二酸化炭素還元 / 金属錯体 / ペプチド / 光触媒 / ミセル / 人工光合成 |
研究実績の概要 |
近年、光化学的CO2還元触媒反応に注目が集まっているが、そのほとんどは有機溶媒中で行われており、水中での反応は研究例が極めて少ない。本研究では、水中における触媒反応を妨げる原因となっている光増感分子から触媒分子への電荷分離効率を上げるため、ミセル界面を反応場として用いる。ミセルへの取り込みを可能とするために長鎖アルキル基を導入したルテニウム錯体触媒を合成する。特に、水素発生を抑える観点からルテニウム錯体活性部位がミセル疎水場にある程度取り込まれることで一定の疎水環境を維持できるようにするとともに、膜酵素を模倣して触媒活性に関わるアミノ酸残基を触媒活性部位近傍の第二配位圏に配置した新規なルテニウム-ペプチド錯体を合成し、その触媒活性を評価する。 具体的には、ビピリジン型非天然アミノ酸を用いたペプチド合成により、第二配位圏に様々な官能基と、長鎖アルキル基を導入した配位子を系統的に合成する。導入する官能基にはアニオン性、中性、カチオン性として酵素活性中心近傍で作用することが知られているアミノ酸残基を用い、基準としてメチル基(Ala)を導入した錯体を合成する。これらのペプチド配位子を有するルテニウム錯体を合成し、そのミセル中における光化学的CO2還元触媒活性を評価する。評価方法には、光増感分子としてルテニウムトリス(ビピリジン)錯体を、電子源には水溶性のアスコルビン酸を用いて、可視光照射により光化学的CO2還元反応を行う。ミセルには、カチオン性、中性、アニオン性の代表的な界面活性剤を用い、その触媒活性の違いからミセル界面における電荷効果を評価する。また、触媒活性部位近傍の疎水性の効果を知るために、ミセル界面からルテニウム錯体までの距離をアミノ酸残基の数により制御し、その活性の変化を調べる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍による研究室閉鎖に加えて、研究代表者自身の異動があり、研究室の立ち上げがかなり制限を受けた影響から、光化学的CO2還元反応を評価することができていないが、初年度である2020年度はルテニウム錯体触媒合成などが中心であること、またこれまでの予備調査の結果からアルキル鎖を有するルテニウム錯体触媒による光化学的CO2還元反応において、触媒的な一酸化炭素生成が確認されていることなどから、おおむね順調に進展していると言える。特に今年度は、ビピリジン型非天然アミノ酸を用いたペプチド合成を行い、基準となるメチル基(Ala)を導入したルテニウム錯体錯体の合成を行うことができ、さらに系統的に異なる鎖長を有する長鎖アルキル基を導入した錯体合成も行った。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は計画通り、まずは基準となるアラニン導入ルテニウム錯体触媒を用いた光化学的CO2還元反応を行い、触媒活性評価法を確立する。触媒反応は、従来の有機溶媒中における均一系触媒反応とほぼ同様に行えるが、予備検討の結果、ミセル系では還元生成物である一酸化炭素生成は定量できるものの、ギ酸定量は難しいことがわかっている。このことから、イオン交換カラムを用いた前処理方法を検討し、一酸化炭素だけでなくギ酸生成量についても評価できるようにする予定である。アルキル鎖長の異なるルテニウム錯体触媒の合成を終えていることから、アルキル鎖長の効果について検討する。 さらに、酵素活性中心近傍で作用することが知られているアニオン性あるいはカチオン性アミノ酸残基を第二配位圏に導入したルテニウム錯体触媒の合成についても進める予定である。
|