研究課題/領域番号 |
20K05532
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
坂田 健 東邦大学, 薬学部, 教授 (90328922)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アンモニア分解反応 / 窒素分子 / DFT計算 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、研究協力者である西林仁昭教授(東京大学)のグループが見出した触媒的アンモニア酸化反応について、DFT計算を用いて反応機構の検討をおこなっている。今年度は、以下の3点について検討をおこなった。 1)マンガン錯体を用いた触媒反応の反応機構:マンガン-サレン錯体を触媒として用いた場合には、反応条件に応じてヒドラジンが生成することから、イミド錯体にアンモニアが求核攻撃する反応機構が考えられた。そこで、モデル反応系を用いてDFT計算による反応機構の検討をおこなった。その結果、イミド錯体にアンモニアが攻撃したのち、脱プロトン化・酸化が繰り返されることで窒素錯体が生成する反応経路は、大きな活性化エネルギーを経る過程もなく、発エルゴン過程であることがわかった。また、律速過程はアミド錯体の酸化過程であることも見出した。 2)ルテニウム錯体を用いた触媒反応における二核化過程:ルテニウム錯体を触媒として用いた場合には、アンモニア錯体から段階的な一電子酸化・脱プロトン化を繰り返してニトリド錯体が生成したのち、二核化過程を経て窒素分子が生成すると考えられている。反応系の高活性化に向けて、アキシャル位配位子として用いているピリジンやイソキノリンに置換基を導入することにより、遷移状態がどのように変化するかDFT計算を用いた検討をおこなった。ピリジンのメタ位やパラ位にBr基を導入した場合には、遷移状態構造においてアキシャル配位子間に相互作用を有しており、活性化エネルギーが低下することが明らかになった。 3)ルテニウム錯体を用いた触媒反応における段階的酸化・脱プロトン化過程:アンモニア錯体からニトリド錯体に至る段階的な一電子酸化・脱プロトン化過程を、周囲の溶媒も含めたより実在系に近いモデル反応系で扱うことを目指して、DFTB法の計算精度の検証をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の記載のとおり進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績2)に関して、さらなる詳細な検討をおこなっており、最終年度終了時までに論文発表をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度も引き続きコロナ禍のため、1)十分な研究活動が制限された点、ならびに2)当初予定していた学会参加がオンライン等に変更されたことに伴い旅費の支出がなくなった点から、次年度使用が生じた。次年度には、これまでに購入した計算機の増強を図ることを目的として、それら計算機のメモリ増強分として使用する予定である。
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