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2021 年度 実施状況報告書

レドックス制御と低酸素部位指向性配位子設計による固形がん用プロドラッグ錯体の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K05533
研究機関関西大学

研究代表者

中井 美早紀  関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (40527115)

研究分担者 矢野 重信  奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (60011186)
小倉 俊一郎  東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (90343160)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード抗がん薬 / 低酸素腫瘍細胞 / レドックス制御 / コバルト(III)錯体
研究実績の概要

本研究の目的はCo(III)錯体の酸化還元電位の精密制御および低酸素部位蓄積性官能基の導入による低酸素腫瘍細胞高選択性次世代Co(III)錯体プロドラッグの開発である。昨年度はTris(2-pyridylmethyl)amine配位子を持つCo(III)錯体の開発を行ったが、いずれも抗がん活性を示さなかったため、ポリピリジンCo(III)錯体の合成と、その還元的雰囲気下での挙動の検討を行った。低酸素状態で細胞毒性が期待できるポリピリジルCo(III)錯体4つの水溶液中およびTris緩衝液中でのアスコルビン酸存在下での挙動を紫外可視吸収分光法で検討したところ、アスコルビン酸との反応が速いCo(III)錯体がもっとも低酸素腫瘍状態に対して細胞毒性が高いことが判明した。一方ポリピリジルCo(III)錯体の酸化還元電位にはそれほど大きく影響しないことが判明した。上記の結果は、効果的なCo(III)錯体をドラッグデザインする上で重要な見地である。
一方で、蛍光性配位子を持つCo(III)錯体の合成を検討するために、4-hydroxycoumarinを出発物質として3段階で、クマリン部位をもつアセチルアセトン配位子の合成に成功した。現在はこの配位子を持つポリピリジンCo(III)錯体の合成の検討を行っている。
今年度は、引き続きクマリン部位を持つCo(III)錯体の合成、並びにCo(III)錯体並びに低酸素部位蓄積性官能基である2-ニトロイミダゾールを持つCo(III)錯体の合成を予定している。さらに、昨年度新たに合成したポリピリジルCo(III)錯体の細胞毒性についても検討を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度は、Tris(2-pyridylmethyl)amine(TPA)配位子を持つCo(III)錯体の開発をおこない、Co(III)錯体の還元電位と細胞毒性の結果を検討したが、TPA配位子を持つCo(III)錯体では残念ながら細胞毒性は見られなかった。TPA配位子を持つCo(III)錯体は生体内還元剤の一つであるアスコルビン酸とほとんど反応を示さないことが判明した。そこで、本研究はポリピリジルCo(III)錯体の開発に焦点を絞り、4つのCo(III)錯体においてアスコルビン酸存在下での挙動を水溶液中並びにTris緩衝液中にて反応を検討した。[Co(MePhen)(CO3)]Cl錯体(MePhen = 4-methyl-1,10-phenanthroline)は最も低酸素状態で細胞毒性が高く、また4つのCo(III)錯体の中で最も、アスコルビン酸との反応が速いことが判明した。反対に、[Co(Me2bpy)(CO3)]Cl錯体(Me2bpy = 4,4’-dimethyl-2,2’-bipyridine)は、 [Co(MePhen)(CO3)]Cl錯体よりも還元されやすいのにも関わらず、アスコルビン酸との反応が遅いことが判明した。以上の結果より、アスコルビン酸との反応性は、抗がん活性を持つCo(III)錯体のドラッグデザインをする上で重要な知見が得られた。
一方、4-hydroxycoumarinを原料として、4-chlorocoumarinを合成し、acetylacetoneと反応させることで、クマリン部位を持つ配位子の合成に成功した。現在は既報をもとにして、このクマリン部位を持つCo(III)錯体の合成を検討している。

今後の研究の推進方策

今後の方針は大きく3点に絞られる。
1.新たなポリピリジン配位子を持つCo(III)錯体の合成と、アスコルビン酸との相互作用の検討を行う。さらに得られたポリピリジンCo(III)錯体の抗がん活性評価とそのメカニズムの解明について検討する。具体的にはHeLa細胞ならびに低酸素誘導因子(HIF)の発現量やp300タンパク質の発現量をウェスタンブロット法を用いて検討を行う。さらにフローサイトメトリーを用いてアポトーシス検出ならびに細胞周期解析から細胞死のメカニズム解明を行う。
2.抗がん活性をもつポリピリジンCo(III)錯体にクマリン部位を導入した錯体の合成を行う。この蛍光物質を導入したCo(III)錯体を用いて、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、細胞内のCo(III)錯体の蓄積分布や、Co(III)錯体配位子解離の挙動を検討する。
3.低酸素細胞への蓄積の向上を目指して、2-nitroimidazoleをポリピリジンCo(III)錯体に導入することを検討する。クリックケミストリー並びにエステル結合を利用してポリピリジン配位子に2-nitroimidazole部位の導入を行う。さらに細胞アッセイにより抗がん活性評価を検討する。

次年度使用額が生じた理由

昨年度と同様に、このコロナ禍により出張が制限され、また学会もオンライン開催されたことにより、旅費に相当する予算の余剰が生じた。本年度は、細胞アッセイや生物学的試験の打ち合わせをするために、共同実験者との打ち合わせに旅費を使用する予定である。
また引き続き、試薬や器具等の消耗備品に充当する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Near-infrared absorption of a benzothiophene-appended triphenylamine radical cation: A novel molecular design of NIR-II dye2022

    • 著者名/発表者名
      Yano Masafumi、Inada Yoshinori、Hayashi Yuki、Nakai Misaki、Mitsudo Koichi、Kashiwagi Yukiyasu
    • 雑誌名

      Dyes and Pigments

      巻: 197 ページ: 109929~109929

    • DOI

      10.1016/j.dyepig.2021.109929

    • 査読あり
  • [学会発表] ジチオジピリジル配位子を有するルテニウム錯体の 合成と光反応挙動2021

    • 著者名/発表者名
      徐 暁・中井 美早紀・矢島辰雄・石田 斉
    • 学会等名
      第71回錯体化学討論会

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公開日: 2022-12-28  

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