研究課題
基盤研究(C)
複数の安定状態を持つ双安定性金属錯体は、配位子の修飾や分子集合構造の制御によって、多彩な電子状態を精密に設計することができる。本研究では、双安定性金属錯体の電子状態をプロトンの動的挙動と相関させた新しい物性変換機構をもつ分子性化合物を開発することを目的として研究を行った。多段階のプロトン脱離が可能な鉄単核スピンクロスオーバー錯体の分子修飾について検討し、水素結合相互作用によって、溶媒分子の脱離に伴う多段階のスピンクロスオーバー挙動変化や、巨大圧力応答性を見出した。
錯体化学
熱や光による物性変換は数多く報告されているが、プロトンに起因した双安定性の発現や電場応答性の研究は皆無であり、本研究の成果をもとに適切な分子選択・分子修飾を行うことで、プロトンに関連した相互作用に連動する新しい外場応答性を持つ機能性分子材料を開発できると考えられる。これらの分子材料は、多重双安定性物質や圧力熱量効果材料などへの応用が期待でき、分子性機能性材料研究において重要な知見を与えるものと考えられる。