研究実績の概要 |
本年は、研究室独自の円偏光発光(CPL)測定システムを改良することと、キラル銅(I)錯体の合成を行い、CPLを測定することの2点を計画していた。 まずCPL測定システムの改良としては、光源を従来用いていた超高圧水銀灯から紫外LEDとすることを行った。水銀灯を用いていた際は、溶液フィルターと色ガラスフィルターの組み合わせで、365nmの光を取り出していたが、今回1個数百円で市販されている紫外LEDと、ペルチェクーラーを用いることで、励起光の当たる部分の照度を落とさず照射部分の面積を小さくすることができるようになり、長時間照射でもサンプルの劣化が押さえられるようになった。 不斉源としてのキラルジホスフィンを含む[Cu(N-N)(P-P)]+型錯体を合成し、円偏光発光の測定を行った。N-N配位子としてdmp(2,9-dimethyl-1,10-phenanthlorine)、P-P配位子としてキラルなdiop(2,3-O-isopropylidene-2,3-dihydroxy-1,4-bis(diphenylphosphino)butane))を用いた錯体の場合は、溶液中でかなり強い発光を示すが、CPLは非常に弱いことが以前判明している。これは銅からジイミンへのMLCT遷移に関連する部分に不斉が含まれていないことが原因と思われ、今回はジイミン配位子にねじれが必ず生じる3,3'-ジアルキル-2,2'-ビピリジンを用いることでMLCT発光に強いCPLが観測できるのではないかと考え、3位と3'位にメチルまたはtブチルメチル基を有するビピリジンを用いて錯体を合成した。ジホスフィンとしてはDIOP以外に、BINAPも用いて錯体を合成した。これらの錯体のCPLを測定したところ、期待通り、3,3'位のアルキル基がバルキーであるほど強いCPLが観測されることが分かった。
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