研究実績の概要 |
本研究は、大きく分けて次の二つの研究目的の下に実施されている。それぞれについて初年度の研究実績の概要を以下に述べる。 1) 磁気泳動の分析化学的展開 ①有機液体中のマイクロバブルの磁気泳動速度を測定し、その速度が液体の反磁性磁化率を反映することを明らかにした。また、マイクロバブルから1mm以内で離れたところにレーザー光を照射するとマイクロバブルの光熱変換泳動が観測され、磁気泳動と組み合わせると、キャピラリー内のマイクロバブルの操作法となることをAIP Advancesに論文として公表した。②液体の流動性に及ぼす磁気力の影響を簡便に計測するための原理を検討した。 2) 磁気光学効果の分析化学的展開 ①水溶液中におけるナノ粒子の凝集反応機構は、コロイドの安定性への関心から近年注目されているが、磁気光学効果を利用する研究は少ない。我々は、磁気配向線二色性スペクトルが、磁性ナノ粒子の会合状態を高感度に反映することを見出した。この方法により、二種の陽イオン性界面化成剤およびNa(I), Co(II), Cu(II), Al(III), Fe(III), Tb(III)およびDy(III)の塩化物の添加により生じるCOOH修飾磁性ナノ粒子の会合開始反応を高感度に決定した。添加剤の会合開始濃度の対数値は、その陽イオンの電荷に概ね比例し、Zagreb 則を支持した。Al(III)とFe(III)については一価の陽イオン性界面活性剤と同様の値を示したことから、中性の水溶液中では、そろぞれ、[Al(OH)2]+および[Fe(OH)2]+として機能していることが示唆された。会合開始濃度は、磁気配向線二色性スペクトルの極大波長からも決定できた。さらに、線二色性の磁場依存性から、会合数が見積もられた。この研究成果をLangmuir誌に公表した。②固液界面および液液界面の磁気線二色性測定装置の作製に着手した。
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