研究課題/領域番号 |
20K05551
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡會 仁 大阪大学, エマージングサイエンスデザインR3センター, 招へい教授 (30091771)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / 磁気配向 / 直線二色性 / 円二色性 / コロイド安定性 / 地磁気効果 |
研究実績の概要 |
分析化学における磁気化学効果・磁気光学効果の利用研究を発展させるために、新たな磁気現象の開拓を目指して以下の研究を行い、多くの成果を得た。コロナ禍の影響もあり、海外の学会には参加を控えたが、国内の学会に研究成果を発表することができた。 1) 磁性ナノ粒子の凝集反応機構の解明に関する研究;磁性ナノ粒子の凝集反応の初速度より臨界凝集濃度を測定する方法として、磁気配向線二色性および光散乱強度の同時測定装置を組み立てた。そして本法が高感度な臨界凝集濃度決定法として利用できることを示した。研究成果は、第82回日本分析化学会討論会(5月)において発表した。 2) 酸化鉄ナノ粒子の磁気配向線二色性(MOLD)スペクトルを利用する分光分析法の開発;磁気配向した非キラルな磁性ナノ粒子を様々な角度で重ね合わせると、円二色性(CD)スペクトルを発生することを見出し、その原因をMueller行列を用いて明らかにした。即ち、PVA膜あるいは分散溶液内で磁気配向した磁性ナノ粒子がLDスペクトルと直線複屈折(LB)スペクトルを示す場合は、その膜試料あるいは溶液試料を重ね合わせることによりCDスペクトルが得られることを、実験と推算の両面から明らかにした。その成果を以下の学会で報告した。第71回日本分析化学会年会(9月)および第16回日本磁気科学会年会(11月)において発表した。また、J.Phys.Chem.C (2023)に発表した。 3)地磁気の化学作用の探索;地磁気レベルの弱磁場において生じる化学現象の計測法として、磁性ナノ粒子のMOLD測定法を検討した。その結果、本法が鎖状磁性ナノ粒子の地磁気配向を高感度に検出し得ることを示唆した。研究成果を日本化学会第103春年会(2023年3月)において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究を計画した当初は、磁性ナノ粒子の磁気泳動に関連する化学効果を予想したが、研究を進める中で、化学反応を伴って生成する凝集体の磁気配向現象が高感度に計測できることが明らかとなってきた。さらに、磁性ナノ粒子のキラル配置が磁場により制御できることを発見した。また新たに、磁性ナノ粒子凝集体の地磁気配向性も発見された。このように、当初の計画を越えた新たな展開が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究で発見した磁気配向直線二色性の高感度性を生かした計測法をさらに進展させ、かつ光散乱法と組み合わせて、磁性コロイドの凝集反応における磁場効果の実態を明らかにしたい。また、磁気配向によるキラル配置の創出が可能となったので、このキラル配置を化学反応に転化する研究を推進したい。さらに、磁性ナノ粒子の地磁気応答性の光学的計測法を発見したので、これを利用し、地磁気による化学的作用の発見に展開したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、①コロナ禍のため、海外での学会への参加が叶わなかったため、旅費の使用額が計画より少なかったこと、および②コロナ禍により、学生による実験補助(アルバイト)経費が発生しなかったことが挙げられる。次年度は、この経費を海外の学会への参加や、実験の効率化に使用する予定である。
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