研究課題/領域番号 |
20K05554
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大堺 利行 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (30183023)
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研究分担者 |
枝 和男 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (00193996)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 油水界面 / 界面活性剤 / 吸着 / 電気二重層 / 非ボルン型理論 |
研究実績の概要 |
先行研究(平成29~31年度,基盤研究(C))において,非ボルン型の溶媒和モデルを用いて界面活性剤(中性分子)の油水界面における吸着平衡を理論計算により予測できることを示したが,本研究では電荷を有するイオン性の界面活性剤に研究対象を広げた。 油水界面の両側に空間電荷層を有する電気二重層モデル(Verwey-Niessenモデル)を仮定し,電気二重層内の静電ポテンシャルを求め,DFT計算と非ボルン型モデルを用いて得られた化学的溶媒和エネルギーに加味することによって,イオン性界面活性剤の吸着エネルギーや界面での配向(配向角,回転角,侵入深さ)を理論的にシミュレーションできることが分かった。初年度には,二種のイオン性界面活性剤と両性イオンについて詳しい検討を行った。 1)カチオン性界面活性剤: ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HTMA+)のニトロベンゼン/水界面での吸着について計算したところ,界面電位が負のときは界面付近のHTMA+のエネルギーが極小になり吸着することが示されたが,界面電位が正になると極小値が現れず,吸着しないことが分かった。この結果は,先に行われた界面張力測定(Kakiuchiら, 1988)の実験結果とよく一致している。さらに,HTMA+と支持電解質イオン(Br-, Cl-など)とのイオン対生成の吸着への影響についても検討できた。 2)アニオン性界面活性剤: ドデシル硫酸イオン(DS-)の1,2-ジクロロエタン/水界面での吸着について検討したところ,DS-は広い電位領域において界面吸着することが示された。この結果は,先にKakiuchiらが提唱した“界面の不安定性“の議論にも資するものと思われる。 3)両性イオン: 生体膜用の膜電位感受性色素(di-4-ANEPPS)の電位依存性の界面配向のシミュレーションにも同様の手法が応用できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように,当初の研究計画に準じて概ね順調に研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
「研究業績」で述べた研究成果を,さらに詳細な理論計算を行うことによって信頼性を高め,より価値のあるものにしたい。そのための方策の一つとして,学会発表を積極的に行い,議論の成熟度と信頼度を高めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は予定通り交付額のほとんどを使い切ったが,若干の金額(13,541円)が残った。次年度に繰り越して使い切る予定である。
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