研究課題/領域番号 |
20K05561
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
柴田 孝之 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (10448491)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | NADP+ / アドレナリン / カテコール酸化反応 / 蛍光誘導体化反応 / 生体試料 |
研究実績の概要 |
本研究は、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)の直接測定法の開発を目的としている。2020年度は、NADP+の存在下でアドレナリンがオルトキノンに酸化される反応の最適化を行った。すなわち、カテコール類化合物の種類、金属イオンの種類およびNADP+の量などを変化させ反応条件を検討した。 まず、情報に従いアドレナリン3 mM、NADP+ 2 mM、硫酸銅0.2 mMを混和・加温したところ、オルトキノンに由来する490 nmの吸収が確認された。本反応は、特に硫酸銅の濃度に敏感であり、硫酸銅を増加すると490 nmの吸収が減少し410 nm付近に新たな吸収が出現した。これは、生成した不安定なオルトキノンが過剰な硫酸銅によって更なる構造変化を受けたためと考えられる。一方、アドレナリン:NADP+:硫酸銅の比率が一定であれば、アドレナリン酸化が進行することが明らかとなった。また、本反応は、アドレナリンを2 mMにしても反応速度が同じであること、反応速度解析により単純な2次反応の速度式に従って進行すること、を見出した。以上の結果から、本酸化反応を用いることで、mMオーダー以下のNADP+の検出に応用できること、カテコールの変化量をNADP+の変化量に換算できること、等の可能性が示唆された。 次に、本酸化反応における被酸化物質の構造上の要求を調べるために、カテコール、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸、ドーパミン、3,4-ジヒドロキシベンジルアルコール、アドレナロンの6種類のカテコール類縁体を使用して反応を行った。しかし、どの化合物においてもオルトキノンの生成は確認できなかった。すなわち、被酸化物質は、アドレナリンおよびノルアドレナリンに限定されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した通り、2020年度は「NADP+によるカテコール類化合物の酸化反応の最適化」を行う予定であり、計画通り試薬の選別や反応速度解析を達成できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に従って、次年度は酸化したカテコール類化合物の蛍光検出反応の最適化を行う。2020年度研究成果より、NADP+によるカテコール類化合物の酸化反応は、アドレナリン、ノルアドレナリンのみでしか起こらないことが分かったため、今後はこの2種類に焦点を絞り、蛍光を発生させるアミノ酸や緩衝液等の反応条件を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用した試薬の種類や購入費が予想より少なくて研究を遂行できたため、使用しなかった分を次年度に繰り越した。一方、2020年度に検討量が少なかった金属イオンの種類を多めに準備する予定であり、この購入費に前年度繰越金を充てる予定である。
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