研究課題/領域番号 |
20K05564
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉川 裕之 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00314378)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 局在表面プラズモン共鳴 / 電気化学 / レーザー描画 / ナノ構造 / 銀めっき / 酸化還元反応 |
研究実績の概要 |
金ナノ粒子を高密度に修飾した基板にプラズモン共鳴波長の光を照射すると、銀イオンの還元反応(めっき)が選択的に誘起される“プラズモン誘起めっき反応”のメカニズムを解明し、より有用で革新的な光技術へと本手法を高度化することを目的とし、本年度は以下の研究に取り組んだ。 1)透明電極ITO上に金薄膜をスパッタし、アニーリングすることにより、表面に金ナノ粒子を固定化した金ナノ粒子-ITO電極の作製に成功した。アニーリング温度、時間を最適化することにより、数Ω/□の低いシート抵抗と、1平方センチメートル当たり約3千億粒子という高い金ナノ粒子密度を達成した。電気化学測定前後で金ナノ粒子の剥離や光学特性の変化が起こらず、高い安定性を有することを確認した。 2)金ナノ粒子-ITO電極を用いた電気化学測定と、電極の反射スペクトル測定を同時に行い、プラズモン特性を電極電位の関数として解析するため、電気化学セル、ポテンショスタット、光照射光学系、マルチチャンネル分光器を統合した分光電気化学計測システムを構築した。 3)電解質中にプラズモンめっき反応溶液と同濃度のクエン酸ナトリウムを添加し、サイクリックボルタモグラムと反射スペクトルの同時測定を行った。電極電位の変化によってプラズモン共鳴波長が可逆的に変化するエレクトロクロミック反応が見いだされ、金ナノ粒子の電子密度変化に起因すると考察した。 4)プラズモンめっき反応溶液と同濃度のクエン酸ナトリウムと硝酸銀を含む溶液中では、同様の分光電気化学測定を実施し、電極電位を約-0.05 V(vs 水銀-硫酸第一水銀電極)よりもネガティブにすると銀が表面に析出し、約0.1 V(vs 水銀-硫酸第一水銀電極)よりもポシティブにすると銀の酸化による溶液中への溶出が起こることを明らかにした。プラズモン誘起めっき反応を電極電位で制御するための基礎データが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高い導電性、粒子密度、安定性を有する金ナノ粒子-ITO電極の作製に成功し、分光電気化学測定システムも構築できた。これらを用いて測定・解析を開始し、プラズモン特性の電極電位依存性を明らかにするなど、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)種々の条件下で分光電気化学測定を実施し、プラズモン誘起めっき反応に伴う自由エネルギー変化、金ナノ粒子と銀イオン、クエン酸の間での電子の授受、さらにそれらの波長依存性を解析し、反応メカニズム解明に取り組む。 2)プラズモン誘起めっき反応を電気化学的に制御し、作製、消去、再描画が可能なレーザー微細描画技術への応用展開を行う。微細構造形成や、極微領域における分光特性、電気電子物性、光機能性の制御を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究打ち合わせや学会の中止およびオンライン開催により旅費の支出がなかった。また一時期、研究活動が制限されたこともあり、研究に必要な物品の購入額も当初予定より減少した。次年度使用額は、活動の制限により実施できなかった学会発表、研究打ち合わせ、実験などに使用する計画である。
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