本研究の目的は、地球温暖化や海洋の酸性化といった環境問題に対する現状の把握と今後の指針に必要なデータをスムーズかつ簡易に測定できる測定方法を確立することである。大気中の二酸化炭素は一定量海洋に吸収されるため、海洋中の溶存二酸化炭素を測定することは環境問題を考えるにあたり必要不可欠であると考えられる。一般的に、水溶液中の溶存二酸化炭素濃度は、平衡器を用いた非分散型赤外分光法により測定された全炭酸(二酸化炭素、重炭酸イオン、炭酸イオンの総和)とpHから理論計算により求められる。我々は光路にサファイアロッドを用いた多重全反射法(赤外光導波路)により、水中の溶存二酸化炭素の赤外吸収測定を実現した。サファイアロッド内を赤外光を導波させたとき、サファイアロッド/水溶液界面で全反射が起こり、ロッド表面にわずかにエバネッセント光が生じる。このとき、サファイアロッド表面に疎水性の多孔質高分子膜を張ることで、水によるバックグラウンド吸収の影響が無視できる程度に緩和された。試料中の溶存二酸化炭素が疎水性の高分子膜に浸透し、エバネッセント光を吸収するため、直接的な溶存二酸化炭素の測定が可能になった。水溶液試料を前処理を行わずに測定可能であることが本法の特徴である。本年度は有機溶媒を混合した水溶液中の有機溶媒の検出、定量について詳細に検討し、エタノール、メタノール、アセトニトリル、酢酸エチルが数%の検出限界により定量できることを確認した。
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