研究課題/領域番号 |
20K05568
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高柳 俊夫 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (50263554)
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研究分担者 |
水口 仁志 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (30333991)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | キャピラリー電気泳動 / ダイナミックフロンタルアナリシス / アルカリフォスファターゼ / 阻害反応 / ガラクトシダーゼ / 競合反応 / エステラーゼ / クレアチンキナーゼ |
研究実績の概要 |
分離定量法として一般的に利用されているキャピラリー電気泳動法を,その分離分析の特長を活用して,速度論反応の解析に用いる新奇な解析手法である「キャピラリー電気泳動/ダイナミックフロンタルアナリシス法(CE/DFA)」を開発した。酵素反応を対象とするDE/DFAでは,十分量の基質がある場合に酵素反応は0次の速度論反応で進行し常に一定量の生成物が生成する。生成物は継続して基質ゾーンから電気泳動分離されるため,プラトーシグナルが得られる。CE/DFAでは生成物が連続的に基質ゾーンからCE分離されるので,生成物の阻害を受けずに酵素反応の解析が可能という特長がある。アルカリフォスファターゼによるリン酸エステルの加水分解反応でプラトーシグナルが得られることを実証した。また,基質リン酸エステルと阻害剤テオフィリンをタンデムでキャピラリーに注入した場合には,電気泳動により阻害剤が基質を追い越す際に阻害反応に基づく一段低いプラトーを得て,アルカリフォスファターゼの阻害反応の解析にも成功した。2つの基質o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシドとp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシドは酵素ガラクトシダーゼに対して競合するが,それぞれの生成物であるp-ニトロフェノールとp-ニトロフェノールは異なる有効電気泳動移動度を示すので2段階のプラトーシグナルを得て,複数基質の競合反応解析の手法を確立した。さらに,酵素の反応速度に対応した検出時間を設定するために,圧力支援を利用するCE/DFAについて,エステラーゼを用いて実証した。クレアチンキナーゼを用いるリン酸基転移反応では,正反応と逆反応を個々に解析することにも成功した。CE/DFAの研究に加えて,キャピラリーゾーン電気泳動法により易分解性を有するフラビン誘導体やアスコルビン酸の精確な酸解離定数を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CE/DFAの主な対象となる酵素反応に関して,CE/DFAの基本的な性能を例示することができた。すなわち,酵素アルカリフォスファターゼを用いて0次反応に基づく速度論反応によりプラトーシグナルが得られるCE/DFAの実証に始まり,酵素と基質のタンデム注入により2段の高さのプラトーシグナルを得て阻害反応の解析に成功した。また,ガラクトシダーゼを用いるCE/DFAでは,2種類の生成物の電気泳動移動度の差に基づいて基質競合の解析に成功した。さらに,速度論反応の反応速度に対応した検出時間を設定する圧力支援の活用,酵素反応の正反応,逆反応の個別解析にも成功している。CE/DFAでは一般的な均一系での酵素反応の解析と異なり,生成物の阻害を受けずに酵素反応の解析が可能という特長を見出した。3年間の研究計画で予定していた酵素反応に関する研究はほとんどが成功しており,これまでの上記の研究について,CE/DFAに関する論文を国内外の有力誌に5報発表した。本研究の計画時と比較すると,均一系触媒での検討を残すのみとなったためでる。
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今後の研究の推進方策 |
CE/DFAの開発について,酵素反応を対象とした研究は順調に進展しており,本年度は普遍性を実証するためにチロシナーゼを用いた2段階での酵素反応の逐次解析に取り組む。チロシナーゼはチロシンをL-ドーパ,ドーパキノンへと逐次酸化する酵素であり,2段階の酵素反応を示す例として採り上げる。2段階の酵素反応の逐次解析は研究計画時には予定していなかったが,計画が順調に進んでいるために新しい課題として取り組む。 また,酵素反応は様々な速度を有するので,CE/DFAで対応可能な酵素反応の速度に関してシミュレーション研究を進める。CE/DFAでは0次の速度論反応を対象とするので,基質過剰の条件が満たされない場合や酵素反応が速い場合には,基質は急速に消費されてプラトーは徐々に低下してしまう。また,反応速度が遅い場合には十分な生成物が得られないためにプラトーの高さが不十分になることが予想される。CE/DFAの特長であるプラトーシグナルが得られる条件を明らかにする。 さらに,均一系触媒でのCE/DFAに関する研究を開始する。酵素も均一系触媒に含まれるが,金属イオンや金属錯体を均一系触媒として用いる速度論反応の解析に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
薬品等の消耗品を十分使用できた一方で,コロナ禍で海外を含む出張旅費をほとんど使わなかったため,次年度使用額が生じた。繰越金は,今年度用いる各種酵素,シミュレーション研究のハードウェア,ソフトウェアの購入に用いる予定である。
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