水溶液表面における全反射法については、カリウムイオン及びカルシウムイオンのK吸収端に展開することに成功した。高エネルギー加速器研究機構の放射光実験施設のBL7Cにおいて、ビームラインのミラーを用いて、水溶液表面に全反射臨界角以下の角度で入射し、水溶液表面におけるカリウムやカルシウムのX線吸収スペクトルを測定した。カルシウムについて、界面活性剤を含む場合と、含まない場合を比較したところ、現段階では水溶液表面での水和構造は同じという結果が得られた。これは、カルシウムイオンと水分子との水和構造が界面活性剤との溶媒和よりも強いためと考えられる。この結果は、これまで臭化物イオンなどの陰イオンで得られた結果とは異なっており、アニオンとカチオンの水和構造や界面活性剤との相互作用の違いを示している。今後、九州シンクロトロン光研究センターの九州大学ビームライン等でも行うことを考えている。 直入射による、水溶液表面の電子収量法については、SPring-8のBL27SU、立命館大学SRセンターのBL13、高エネルギー加速器研究機構の放射光実験施設の旧JAEAビームラインのBL27Aや、BL9Aなどで試みたが、いずれも成功しなかった。原因として、これらのビームラインでは、X線の光軸がわずかに跳ね上げであるため、用意したセルの界面でフットプリントを稼ぐことが出来なかったためと考えている。特に、立命館大学SRセンターのBL13は以前、試験測定に成功したビームラインだか、その後、ビームラインの改造があり、結果を再現することが出来なかった。現在、この手法について今後どのように展開するか検討している。
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