研究課題/領域番号 |
20K05582
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田中 稔久 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20373326)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バイオベースポリマー / ポーラス構造 / 繊維 / 高機能化 |
研究実績の概要 |
海水・河川・土壌中の細菌により容易に分解する「バイオベースポリマー」を使った製品開発が期待されている。しかし、バイオベースポリマーを従来のプラスチック製品の代替材料として使用する場合、生産コストの削減、機能性・物性の向上(加工性の改善・高強度化・分解性の制御・表面特性の制御)など、達成しなければならない課題は多い。 以上のような、バイオベースポリマーの利用・普及において克服すべき課題として、機能性や物性を向上させるために、微結晶核延伸法(冷結晶化)により作製したバイオベースポリマー繊維の高機能化を目指した。 バイオベースポリマー試料として、微生物産生脂肪族ポリエステルのポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート]の共重合体である、ポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート-co-(R)-3-ヒドロキシヘキサノエート] (P(3HB-co-3HH))を用いた。 溶融紡糸後、一定環境条件で延伸を実施することで、ポーラス構造を有するP(3HB-co-3HH)繊維を作製した。ポーラス構造の形成制御のために、冷結晶化条件において、異なる溶媒、温度、時間を検討することで、微細なマイクロポーラス構造だけでなく、マクロな中空構造の形成が認められた。マクロな中空構造の形成条件は明らかになってきたが、形成メカニズムや主たる要因は、まだ明確になっていない。 また、微結晶核延伸法(冷結晶化)を溶融フィルムに適用し、冷結晶化条件の検討により、ポーラス構造を有するP(3HB-co-3HH)フィルムの作製に成功した。作製した内部構造の異なるP(3HB-co-3HH)フィルムの力学物性や透明性、構造解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2・2020年度は、新型コロナウィルス感染症拡大により、大学や研究室内での実験の実施が禁止・制限された。令和3・2021年度から令和4・2022年度にかけ、実験の実施は可能となったが、当初の研究計画から変更の必要があり、研究計画に沿った詳細な実験条件の検討が実施できなかった。また、計画通りの経費使用もできなかった。令和5・2023年度は、当初の研究計画から変更した実験計画に沿って成果が得られたが、全体の進捗状況としては、遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究実施計画としては、当初計画していた4年間では達成できなかった課題を、5年目(令和6・2024年度)に実施することを目標とする。具体的には、バイオベースポリマー繊維の作製条件の検討を実施する。条件検討により作製した試料に関して、物性評価・機能性の付与を行い、バイオベースポリマー繊維の高機能化を目指す。随時、得られた結果について取りまとめ、学会発表や論文等により成果の発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2・2020年度は、新型コロナウィルス感染症拡大により、大学や研究室内での実験の実施が禁止・制限された。令和3・2021年度から令和4・2022年度にかけ、実験の実施は可能となったが、当初の研究計画から変更の必要があり、研究計画に沿った詳細な実験条件の検討が実施できなかった。令和5・2023年度は、当初の研究計画から変更した実験計画に沿って成果が得られたが、全体の進捗状況として遅れており、使用予定の経費使用ができなかった。 次年度は、さらなる新規実験の検討と共に、得られた成果の学会発表、論文発表に使用する予定である。
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