研究課題/領域番号 |
20K05584
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
室山 広樹 京都大学, 工学研究科, 講師 (40542105)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ペロブスカイト型酸化物 / ナノ粒子 / アンモニア分解 |
研究実績の概要 |
前年度と同様の方法で調製したBaTiO3ナノ粒子の乾燥方法を、これまでの凍結乾燥からCO2超臨界乾燥に変更した。さらにNi種の担持方法として、これまでは乾燥したBaTiO3ナノ粒子粉末へのNi成分の含浸担持を試みていたが、今年度はBaTiO3コロイドへNi(OH)2コロイドを混合し、これらを同時にゲル化・乾燥する手法を採用した。その結果、232 m2 g-1の高い表面積を有するナノ粒子触媒の調製に成功した。また、TEM観察より、触媒は5-10 nmのBaTiO3粒子と2-5 nmのNi種の粒子から構成されていることがわかった。従来の触媒では、Ni種が20-50 nmの粒子で存在していたため、今回調製した触媒において、Ni成分が非常に小さい粒子として高分散に担持されていることが明らかとなった。本触媒を使用してアンモニア分解反応試験を実施したところ、550 ℃までの温度域において従来の触媒よりも高いアンモニア転化率を達成することができた。 本ナノ粒子触媒の調製段階において、いくつかの酸を使用するため、塩基性酸化物であるBaTiO3への影響が懸念された。そこで、本触媒についてICPによる組成分析を実施した。その結果、Ti/Ba比が1.92であり、BaTiO3のTi/Ba比である1よりもかなり高く、触媒中のBa成分が不足していることが明らかとなった。触媒の各調製段階における組成分析の結果、BaTiO3粒子の表面修飾やNi(OH)2のコロイド化において使用したカルボン酸系の化合物が、BaTiO3のBa成分のみを特異的に溶解したことが示唆された。したがって、触媒のTi/Ba比が1となるような調製方法へ改良する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BaTiO3コロイドへNi(OH)2コロイドを混合することで、高表面積を有するナノ粒子触媒の合成に成功した。調製段階で使用する酸により、触媒から部分的にBa成分の溶出が認められたものの、従来の触媒より高いアンモニア転化率が達成された。またBaTiO3以外のペロブスカイト型酸化物の合成にもとりかかっており、系統的な合成条件を見出すことを目指している。
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今後の研究の推進方策 |
BaTiO3以外のペロブスカイト型酸化物の合成およびそれを使用したNi触媒の調製を実施する。触媒材料の高表面積化がアンモニア分解活性の向上に寄与することを明らかにする。また、触媒材料の組成分析を行い、調製手法の改良・最適化を目指す。 高表面積を有する材料は粒子サイズが非常に小さいために、触媒反応中に凝集し、性能低下を招く可能性が考えられる。そこで、アンモニア分解反応の長期試験を行い、性能やその他の物性の変化を検討する。
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