研究課題/領域番号 |
20K05586
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
青野 宏通 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (00184052)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゼオライト / ゲーサイト / 陰イオン / リン酸 / ヒ酸 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ゼオライトに簡便なFe処理を施すことにより陰イオン交換能力を発現させ、優れた陽イオン交換能力と陰イオン交換能力も有している新規かつ安価なハイブリッドゼオライトを開発することである。陰イオン交換については、有害な放射性同位体、リン酸およびヒ酸などの陰イオン選択吸着特性に着目し、合成方法の確立、およびイオン交換の機能性やメカニズムの明確化を実施する。 ゼオライトとしてNa-P1型ゼオライトとモルデナイトの2種を選択した。前者は十分なFe吸着を得ることができたが後者はほとんど吸着せず、陰イオン交換能力も小さかった。Na-P1型ゼオライトについては、Naイオンの減少量よりFe増大量の方が大きかったことから、ゼオライトの表面修飾も起こしていることが考えられた。このNa-P1型ゼオライトについてFe吸着後のリン酸およびヒ酸の吸着能力の検討を行ない、Langmuir型吸着等温線から、各試料の最大吸着容量を求めることができた。また、Fe吸着後に表面水酸基濃度の増大を目的としてpH12のアルカリ処理をすることにより陰イオン吸着能力が増大することがわかった。 また、ゼオライトだけではなく、ゲーサイト(FeOOH)を物理的粉砕または化学的合成により表面積を増大させ、陰イオン吸着能力についても検討を行なった。その結果、物理的粉砕についてはゲーサイトの表面積に応じてリン酸イオンの最大吸着容量が増大した。化学的合成法によりゲーサイト微粒子を合成することにも成功し、物理的粉砕により得られた表面積と最大吸着容量の相関性よりも、やや高い吸着容量が得られた。これについては、化学的合成法ではアルカリを使用するため、より多くの水酸基がFe上に形成され、高い交換容量が得られたと考えられ、Fe吸着ゼオライトがアルカリ処理により陰イオン交換容量が増大することと同様の挙動であると推測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により明らかにする点として以下を申請書に挙げている。 ①母体となるゼオライトの種類の検討、②Feイオン吸着条件の検討、③陰イオン選択能力の検討、④合成方法の検討、⑤水酸化鉄以外の表面水酸化物の検討 概要で述べたように、①②③④については、細かい条件まで検討しているとは言い難いが、おおむね順調に進展していると言える。⑤については、①②③④が完了したうえでの発展的な研究であると考えられるため、1年目からの実施は困難であると考えられる。 以上のことより、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策について、申請書に挙げた項目別に述べる。 ①母体となるゼオライトの種類の検討については、Na-P1型ゼオライトが良好であったことより、このゼオライトに定めて研究を行う。②Feイオン吸着条件の検討について、吸着条件はFe濃度を変化させて検討を行い、陰イオン吸着能力が最適となる条件を得ている。母体となるゼオライトの陽イオンに対する性能についても検討を行う予定である。③陰イオン選択能力の検討は、陰イオンとしてリン酸およびヒ酸の2種について検討を行っている。最大吸着容量についての算出は行なったが、諸条件における検討は十分ではない。④合成方法の検討について、特にゲーサイトによる化学的合成は、非常に優れた吸着容量が得られているが、同じ条件でも陰イオン交換能力にばらつきがあり、合成条件による影響についても十分な検討が必要である。⑤水酸化鉄以外の表面水酸化物の検討は、これ①②③④の研究において、十分完了した時点で行う。現在とのところ水酸化物を形成しやすいCoなどが考えられるが、今後検討をしていきたい。 以上のように今後の研究を進めていく予定で会う。
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