本研究は、ゼオライトに簡便なFe処理を施すことにより陰イオン交換能力を発現させ、優れた陽イオン交換能力と陰イオン交換能力も有している新規かつ安価なハイブリッドゼオライトを開発することを目的としている。ゼオライトとしてNa-P1型ゼオライトを選択し、Fe吸着後の陽イオンと、陰イオンであるリン酸およびヒ酸の吸着能力、について検討を行った。 令和4年度は、pH5とpH10の酸および塩基条件にて陰イオンの吸着試験を行った。その結果、pH5の酸性条件において、リン酸およびヒ酸の吸着能力が著しく高まり、一方塩基性では低下することが明らかになった。さらに、酸性条件でFe吸着後のゼオライトを処理することでも吸着能力が著しく向上することが明らかになった。 また、ゼオライトだけではなく、ゲーサイト(FeOOH)を化学的合成により表面積を増大させ、陰イオン吸着能力についても検討を行なった。その結果、化学的合成法によりゲーサイト微粒子を合成することに成功し、化学的合成における熟成時間が大きいほど粒子が成長し最大吸着容量が低下することがわかった。この化学合成は時間が短いほど表面性が増大するため優れた吸着容量が得られている。しかし、このような微粒子化した試料は扱いづらくなるため、合成時に粒子径の大きいゼオライトを混合し、複合材料とすることで、ゼオライトそのものの性能を維持しつつ、陰イオン交換能力を持たせることが可能となった。 一方、本研究のFe吸着させたNa-P1型ゼオライトは、本来の陽イオン吸着後、焼成することによりFeとの複合酸化物を形成することにより、ゼオライトのみより安定な固定化相を形成し、原発の廃炉に伴う放射性核種処理にも有効であることがわかった。 本研究により、Na-P1型ゼオライトのFe処理による陽イオンおよび陰イオン交換能力、さらには焼成処理による固定化についても明らかになった。
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