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2022 年度 実績報告書

スイッチ機構により海中で迅速に生分解するポリプロピレン/ポリ乳酸ブレンドの開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K05587
研究機関長崎大学

研究代表者

中谷 久之  長崎大学, 工学研究科, 教授 (70242568)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード海洋生分解 / 珪藻 / 油分 / ポリオレフィン
研究実績の概要

令和2年度において、ポリプロピレン(PP)とポリ乳酸(PLA)をヒンダードアミン系光安定剤 (HALS)で生成させたドーマント結合を分解のスイッチとしての機能並びに相溶化剤として利用して、さらにグリセリン添加で親水性を向上させたPP/PLAブレンドで水中での生分解率を約20%まで向上することに成功した。令和3年度では海中でのこのブレンドの生分解性を検討した。その結果、弱アルカリ性の海水中では生分解率は3%まで低下した。原因としてアルカリ性の海水中では中和によりスイッチ機構が働かないためと結論付けた。そこで令和4年度では、代替として海洋性微生物による生分解化の検討を行った。長崎港近海の数か所で海水を採水し、その中に含まれる微細藻を中心として生分解性のスクリーニングを行った結果、珪藻や一部のバクテリアがブレンド中のPP成分を選択的に摂食することを確認した。摂食機構の詳細を解明するために、劣化したPPフィルムに可溶性Siを加え、海水を用いたBOD試験を行った。試験後FT-IR測定では、可溶性Siを加えていないPPフィルムと比較して、Siを加えたフィルムでは、O-H伸縮振動の帰属される強いピークが得られた。SEM観察で珪藻の付着が確認できたことから、珪藻由来のセルロースのピークによることが明らかとなった。また可溶性Siを加えた場合、BODから求めた生分解率は2~3%と低く、加えていない場合と差は無かった。SEM写真上では、PP表面の明確な浸食が観察できることから、PPが完全には代謝されず、珪藻内に低分子化された油分として貯蔵されていると推定した。珪藻はC30程度の油分を体内に貯める特性があることが知られている。現在、この油分貯蔵する特性と関連があると考えており、生分解化よりも付加価値がある油分貯蔵特性を利用したポリオレフィンの新規リサイクルの開発を行うことを計画している。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Rapid oxidative fragmentation of polypropylene with pH control in seawater for preparation of realistic reference microplastics2023

    • 著者名/発表者名
      Nakatani Hisayuki、Ohshima Yuina、Uchiyama Taishi、Motokucho Suguru、Dao Anh Thi Ngoc、Kim Hee-Jin、Yagi Mitsuharu、Kyozuka Yusaku
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 1-8

    • DOI

      10.1038/s41598-023-31488-w

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Degradation and fragmentation behavior of polypropylene and polystyrene in water2022

    • 著者名/発表者名
      Nakatani Hisayuki、Ohshima Yuina、Uchiyama Taishi、Motokucho Suguru
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 1-7

    • DOI

      10.1038/s41598-022-23435-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 微生物によるポリプロピレン(PP)のアップグレードリサイクル化2023

    • 著者名/発表者名
      大久保聖也、坂田智哉、本九町卓、Anh Thi Ngoc DAO、中谷久之
    • 学会等名
      マテリアルライフ学会第27回春季研究発表会
  • [学会発表] 海洋マイクロ・ナノプラスチックとそのモデル試料の比較2022

    • 著者名/発表者名
      中谷久之、大島由結奈、内山大志、本九町卓
    • 学会等名
      第71回高分子学会年次大会
  • [学会発表] 海中で生分解するポリプロピレン系材料の開発2022

    • 著者名/発表者名
      大久保聖也、坂田智哉、本九町卓、中谷久之
    • 学会等名
      マテリアルライフ学会「第 33 回研究発表会,特別講演会」
  • [学会発表] 海洋マイクロプラスチックモデルの作製2022

    • 著者名/発表者名
      中谷久之、大島由結奈、内山大志、本九町卓
    • 学会等名
      第71回高分子討論会
  • [学会発表] 長崎県近海におけるマイクロプラスチックの種類別分布状況2022

    • 著者名/発表者名
      中谷久之
    • 学会等名
      第9回高分子学会グリーンケミストリー研究会シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Fragmentation Mechanisms of Microplastics and Their Distribution Behavior in the Sea near Nagasaki2022

    • 著者名/発表者名
      Hisayuki Nakatani
    • 学会等名
      11 International Symposium on Feedstock Recycling of Polymeric Materials 2022
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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