研究実績の概要 |
① カルボニル化合物のα位へのハロゲン化(陽極)と、硫黄アニオンなどの有機アニオン種(陰極)を、分離型電解セルでそれぞれ発生・蓄積し、通電終了後に溶液混合することで、生成物に硫黄部位などの導入を目指した反応開発に取り組んだ。アセトフェノンをモデル基質とした臭素化では、様々な条件検討の結果、1臭素化体と2臭素化体との混合物になり、その比率制御が難しい点、陽極臭素化の収率自体も低い点などが問題点として明らかになった。文献調査の結果、Hilt, G. et al. Org. Lett., 2020, 22, 5968.の文献を参考にすると、モノヨウ素化体で反応が止まる可能性が示唆された。そこで、エノールシリルエーテルを基質とした陽極モノヨウ素化を検討したところ、中程度の収率で、アセトフェノンのα位にヨウ素が1個導入されることを見出した。現在、徹底的な条件検討を行っており、より高い収率でモノヨウ素体が得られる条件を探している所である。 ② 並行して、両極合成を用いたイミニウムカチオンとアリルシランのin-situ合成と溶液移動による炭素-炭素結合形成の検討を行っている。電解フロー系では報告例はあるが(Yoshida, J. et al. QSAR Comb. Sci. 2005, 24, 728. )、バッチタイプでは初めての試みとなる。陽極のみ、陰極のみのそれぞれの反応の検討を行いつつ、目的とする溶液移動による炭素-炭素結合形成を試みたところ、低い収率ながら溶液移動により炭素-炭素結合形成した化合物の存在を確認できている段階まで到達した。 ③ その他として、溶液移動による含硫黄化合物の電解合成や、いくつかの反応系の開発にも成功しており、論文掲載済み、あるいは投稿予定のものがある。
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