研究課題/領域番号 |
20K05591
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
廣田 憲之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (10302770)
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研究分担者 |
久保 裕也 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (90604918)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気分離 / 製鋼スラグ / 超伝導磁石 / 磁気アルキメデス効果 / 電気パルス粉砕 |
研究実績の概要 |
鉄鋼精錬で排出される製鋼スラグにはリンやマンガン、金属鉄といった有価物質が多く含まれるが、現状ではそれらは有効に活用されていない。本研究では、これらの物質が製鋼スラグ中において鉄マンガン酸化物相(常磁性)、リン濃縮相(反磁性)、金属鉄細粒などの形態をとり、その分布が偏っていること、各相の磁気的性質が異なることに着目し、磁気分離法を活用することで分離回収・再資源化する手法の開発を目指している。高効率での分離を実現するため、分離の前処理として製鋼スラグに対して電気パルス粉砕を適用し、その微細化処理のための条件、超伝導磁気分離、及び、磁気アルキメデス分離の適用条件について、種々のパラメータの最適化を検討している。令和3年度は、引き続き、模擬スラグ、実スラグの水中における電気パルス粉砕を最適化するため、分散材、印加電圧、周波数、パルス数などをパラメータとした各種条件の検討を進めた。また、より望ましい層を得るためのスラグ形成過程の影響についても考慮した。粉砕処理をしたスラグ懸濁液について、超伝導マグネット内にステンレスメッシュを配置した流通式の高勾配磁気分離カラムを用いて分離実験を行った。流速、メッシュ径、印加磁場強度、流通回数などの影響を調査した。設定した条件により、収率や濃縮度が変化する傾向について解析を進めている。また、磁気分離のシミュレーションを実施し、分離条件検討の効率化を進めた。さらに、磁気力だけではなく、各相に作用する重力影響も利用した、磁気アルキメデス分離の適用、および、乾式分離プロセスの利用についても評価し、有用物質の再資源化に向けた分離システムについての検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、製鋼スラグに含まれるリンやマンガンの分離回収・再資源化を目指している。それらの物質がそれぞれ異なる相に存在し、各相の磁気的性質が違うことを利用して磁気分離するための条件を検討している。令和3年度には、試料の前処理として、スラグの形成過程への配慮、電気パルス粉砕におけるモノドメイン化に向けた条件検討が進んでいる。また、分離試験と並行して、シミュレーションによる検討も進めている。磁気アルキメデス分離とのハイブリッド化の検討も行なっており、現在までのところ、当初想定していたスケジュールに近い状況で進行しており、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、電気パルス粉砕、磁気分離プロセスともに、これまでに進めてきた微細化処理、分散性の向上に向けた分散条件、電極ギャップや消費電力、粉砕重量等の影響の検討、粉砕後処理の必要性についての評価、印加磁場強度、流速をパラメータとした分離条件の検討など、系統的な評価を継続して進める。得られた知見の体系化を行ない、製鋼スラグに含まれる有価物質の粉砕・分離条件の最適化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、福岡工大チームが行う試料調製の一部で東北大学の設備を利用する必要があること、また、高磁場を利用する分離実験はつくばの物質・材料研究機構において行なうことから、多くの旅費を見込んでいたが、コロナウイルス感染拡大防止に伴う移動が制限のため、旅費を利用することが無かったので、次年度使用額が生じた。 この次年度使用額については、移動が可能となった際の旅費として使用するほか、これまでの実験において得られた知見をもとに、使用する磁気分離流通システムの改良に使用する予定である。
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